Apple Musicが、最近フランスでブレイクしているインディペンデント・アーティストのうちの一組である、ラップ・デュオのPNLと協力しているとローリング・ストーン誌が報道した。「アップルは彼らと契約したばかり。同社は、PNLと幅広いパートナーシップを結び、今後数カ月の間に、共同ブランドの動画やプロモーションが行われる予定だ。さらに、特別な共同イベントも開催されると予想されている」とローリング・ストーン誌は主張している。

また、PNLは、『Deux Frères』というアルバムを、Apple Musicで独占公開していた4曲の追加トラックとともに再リリースするという。ローリング・ストーン誌は「PNLの契約に詳しい情報筋によると、将来的にも、Apple Musicにて独占公開される楽曲群がさらに確保されており、アップルはPNLが完全なるインディペンデントというステータスを維持する手助けをすることに多大な誇りを持っている」という。

Apple Musicのラリー・ジャクソン氏は、インスタグラム上でPNLを賞賛している。「彼らは勇敢にも、音楽業界のあらゆる会社からの数え切れないほどのオファーを、インディペンデントで活動し続けるため、そして、自分たちの原盤に対する支配権を失わないために、断ったのです」

ここでは描写が重要な意味を持つ。PNLはいまだインディペンデントであり、アップルと「契約」したわけではない。アップルは、レーベルとしての役割を置き換えるのではなく、バンドがレーベル自体を必要としなくても済むよう、手助けするパートナーとしての立ち位置を築いているのだ。

しかし、今回の件を唯一無二の新しいトレンドだと早合点する前に、他の事例についても認識しておく必要があるだろう。例えば、Lil Nas Xは、「Old Town Road」が急上昇してコロンビアと契約する前には、ディストリビューターのAmuseを通じて最初の楽曲をリリースしていた。他にも、元Spotify幹部のトロイ・カーター氏が率いるアーティスト・サービス企業のQ&Aでは、アトランティック・レコードとパートナーを組み、アーティストとレーベルの仲立ちをしていることなどだ。

音楽をライセンスすることも含め、アーティストと直に協力しているDSPは、確かに破壊的な影響を持ちうる。しかし、こういった動きは、「ストリーミング・サービスがレーベルを置き換える」というよりかは、「双方に対して、新しい形で行われる、新たな種類の契約」であると捉えるべきだろう。今は、こういった新たな形が生まれやすい魅力的な時だ。そして、これらの破壊的影響が、アーティストの権利とコントロールに不利な形ではなく、有利な形で動いていることにも注目すべきかもしれない。