ストリーミング・サービス

Spotifyがフェイスブックの仮想通貨Libraを支援

音楽ストリーミング・サービスのSpotifyが、フェイスブックが新たにローンチする仮想通貨Libraの最初の支援者のうちの一社となる。フェイスブックが、新しい子会社であるCalibraが開発するウォレットとともに、仮想通貨を2020年にローンチするという。

そしてこれを全面的にサポートするのが、The Libra Associationという独立した非営利団体になるとフェイスブックは発表している。Spotifyは、eBay、Uber、Lyftなどと並び、その団体の「テクノロジーおよび市場」分野の創設パートナーになるという。ちなみに、「支払い」分野の創設パートナーはMasterCard、Visa、PayPal、Stripeだ。

フェイスブックはLibraについて、「初期段階から、Calibraはスマートフォンを通じて、ほとんど誰にでも、テキストメッセージを送るのと同じくらい簡単、かつ即座に、低コストもしくは無料で、Libraを送ることを可能にします。行く行くはボタン一つで請求書を支払ったり、コードをスキャンして一杯のコーヒーを買ったり、現金やメトロパスを持ち運ぶ必要なく、公共交通機関に乗ったりといった人々や企業のための更なるサービスも提供したいと思います。」と宣伝している。

Spotifyもなぜこのプロジェクトに参加するかを説明するブログを発表している。「Libraはインターネット上において、シンプル、便利、かつ安全な支払いを実現するための大規模な機会です(特に、世界中のモバイル・マネーや銀行口座、支払いカードへのアクセスを持たない17億人の大人にとっては)。我々が事業を展開している多くの発展途上国において、このような現状を直接見てきました。」とSpotifyは語る。

Spotifyのチーフ・プレミアム・ビジネス責任者であるアレックス・ノーストロム氏はさらに詳細な情報を提供している。「Spotifyと世界中のユーザーにとっての課題の一つとして、簡単にアクセス可能な支払いシステムの欠如が挙げられます。財政的に十分なサービスを受けられていない市場に関しては特にそうです。これは、クリエイターとファンの間に我々が築こうとしている絆への大きな障壁になっています。The Libra Associationに参加することで、より効果的にSpotifyが達成しうる最大の市場規模に到達し、摩擦を取り除くことで大々的な支払いを可能にできる機会があるのです。」

つまり現時点では、この試みは、Spotifyがアーティストに対する支払いをブロックチェーン / 仮想通貨で行うというよりかは、Spotifyに対するリスナーの支払いのことにフォーカスを当てているようだ。しかし、ブロックチェーン分野のエキスパートであるUjoのアドバイザーであるサイモン・デ・ラ・ルヴィエール氏は、アーティストへの支払いに関しても可能性はあると述べる。「仮想通貨は、世界中に点在する複数のアーティストにロイヤリティを支払うのに適しているからです」とルヴィエール氏は語った。

トリガー・シティ:中南米とアジアの都市が世界的ヒットの在り方を再定義する

音楽データツールを提供するChartmetricのジェイソン・ジョーヴェン氏が「トリガー・シティ(※Chartmetricのチャズ・ジェンキンス氏によって考案された表現)」について分析するブログを発表した。

要約すると、オンラインにおいて楽曲の人気が出始める地域、世界的なヒットに繋がりやすい地域を理解する内容になっている。これらは、常に明白な地域(例えばロンドンやニューヨーク、ロサンゼルス、ベルリン、ストックホルムなど、自分たちをテイストメーカーとして位置付け田がる人々がいる都市)であるとは限らない。

「インドネシアの流行に敏感な人がSoundCloud上で無料で見つけた楽曲を、次の週には、Spotifyプレミアムをファミリープランで使うアイオワ州の10代ユーザーが再生しているかもしれません。もしくは同じ日にそうなることだってあり得ます。」とジョーヴェン氏は述べる。

音楽業界はまだ、音楽プロモーションとバイラリティーにおける根本的変化を理解しようとしている段階にあるとジョーヴェン氏は主張している。

楽曲の「誇大宣伝の源」は今や「社会経済的に、IFPIが毎年測定する世界のストリーミング収益への貢献度がそれほど高くない都市」でも発生しうる。これらの都市が「トリガー・シティ」であり、事実上、楽曲に対して、分散した一連のゲートキーパーとしての役割を果たしており、ストリーミングが成長するに従って、影響力を増していくという。

昨年ジェンキンス氏が実施した楽曲の初期分析(アーティストの国籍にフォーカスするのではなく、ストリーミングにおいて勢いが増した地域を調べたもの)では、「中南米と南および東南アジアの『トリガー・シティ』は、より早く新興のアーティストにエンゲージメントを示す傾向がある」ことを発見している。これは、聴かれているアーティストの出身地に関わらず、だという。トリガー・シティが引き金となり、ドミノ効果的に他の都市がそれに続いているとのこと。

ジョーヴェン氏がデータを詳細に調べたところによると、Spotifyにおける月間リスナー数ではメキシコシティとサンティアゴが上位二都市だったとのこと(ちなみにサンパウロは5番目)。ジャカルタ、ブエノス・アイレス、ケソンシティも上位20位以内にランクインしている。

YouTubeでは、メキシコシティ、バンコク、ボゴタ、サンティアゴ、リマ、サンパウロ、インドの複数都市が上位を占めているという。しかし、ジョーヴェン氏は、重要な警告として、アメリカのヒット曲がこれらの都市で容易に優勢になれるわけではないと付け加えている。

突き詰めると、音楽業界は、どこにマーケティング費用やオンライン広告予算を使うか配分するかを考える必要があるという。これらの「トリガー・シティ」は、従来、費用が多く割かれてきた都市よりも、ずっと多くのストリーミング再生回数(そしてずっと多くの収益)を生み出すことができる。この事実を念頭に置いて、ビジネスは焦点と取り組みを再調整していく必要があるだろう。

「サブスクリプション疲れ」はまだ米国に打撃を与えていない

最近、潜在的な課題として「サブスクリプション疲れ」への懸念が議論されることが増えている。「サブスクリプション疲れ」とは、人々が、様々なデジタル / エンタテインメントのサブスクリプションにお金を払いすぎていると考え、それ以上増やすことに反対し始めるポイントのことだ。調査会社のeMarketerは、最新レポートで、まだサブスクリプション疲れは起きていないと分析している。

「アメリカ人の3分の1以上が今後2年間で使用しているサブスクリプション・サービスの数を増やすことになると考えているという結果が出ています」とeMarketerは述べている。

現在、アメリカ人は平均して3つのサブスクリプション・サービスに登録しており、5年前の2.4という数字からも増えている。

アメリカでは、回答者の57%がテレビや動画オンデマンド・サービスの使用に興味を持っていると回答し、38%が音楽サブスクリプション・サービスの使用に興味を持っていると答えたという。

この数字は、米国における音楽サブスクリプション成長の可能性の上限を表しているとも考えられるかもしれない。しかし、YouTubeやPandora、Spotifyなどのサービスは、サービスにお金を支払っていないユーザー(ちなみにこの層はアメリカの人口の62%だと言われている)でも、広告サポートで音楽を聴くことにより、収益化は可能だと主張するだろう。

サブスクリプション課金技術に関わる企業のZuoraによる調査では、中国における回答者の53%が、今後2年間で、使用するサブスクリプション・サービスの数が増えると思うと回答したという。より多くの人が音楽にお金を支払うようになることを望んでいる中国の音楽市場にとっては励みになる回答だと言えるだろう。

Spotifyが運転者向けに音楽とポッドキャストを再生できるスピーカーを試験中

Spotifyが初となる消費者向けハードウェアとして、音楽やポッドキャストが再生可能な、車向け音声コントロール型スピーカー「Car Thing」を発表した。Spotifyによると、Car Thingは商品化はされておらず、現在はアメリカの「招待された数組のSpotifyプレミアム・ユーザー」間で試験運用中だとのこと。

ユーザーがCar Thingを乗り物に設置すると、どのように使用しているかというデータがSpotifyに送り返され、運転者が何を聞いているかをより深く理解し、今後の製品や機能に活かす仕組みになっているという。

「Spotifyの将来的計画について、様々な憶測があることは承知していますが、今回のCar Thingは、人々が音楽とポッドキャストをどのように聴いているかについて、我々の理解をより深めるために開発されました。我々は引き続き、ハードウェア制作ではなく、オーディオ・プラットフォームとして世界一を目指しています。」とSpotifyはコメントしている。

研究目的だとしても、Spotifyが独自のハードウェアを開発することには意味がある。Spotifyは自社サービスを、スマートフォンからスマートスピーカーまで、できるだけ多くの異なるデバイス上で利用可能にすることを目標としているからだ。

Spotifyは現在も、アマゾンのEchoやGoogle Homeではデフォルトの音楽ストリーミング・サービスとして設定することができるし、AirPlayを使えば、アップルのHomePodでも再生することができる。しかし、ユーザーがこれらのデバイスをどのように使用しているかについて、Spotifyが得られるデータは限られている。もし万が一、Spotifyが最終的に独自の商業的ハードウェアを制作しなければならないとすると、人々がこういったデバイスをどのように利用しているのかという情報を今得ておくことは、必要不可欠と言えるだろう。

また、SpotifyはCar Thingに続くデバイスも検討中だという。「将来的に音声を利用した似たようなテストも行うかもしれません。なので、『Voice Thing』や『Home Thing』と聞いても驚かないでくださいね」と自社のブログにコメントしている。

Spotifyは、Car Thingがテスト目的であり、現在のところ消費者向けに売り出す予定は無いと強調している。

テンセント・ミュージックのオンライン音楽分野の有料ユーザーは2,840万人に

中国のテンセント・ミュージック・エンタテインメントが、2019年第1四半期の決算を発表した。音楽ストリーミングの成長というより、これまで通りソーシャル・エンタテインメントアプリ(カラオケ・ライブ配信)に焦点を当てたビジネスによって、純利益は9億8,700万元(約157億4千万円)となり、総収益は前年同期比39.4%増となる57億4千万元(約915億8千万円)となった。

音楽ストリーミングはどのような数字となっているだろうか?テンセント・ミュージックが中国で運営する3つのオンライン音楽サービス(QQ Music=QQ 音楽、Kugou=酷狗、Kuwo=酷我)のモバイル月間アクティブ・ユーザー数は、昨年3月末時点での6億2,500万人から4.6%成長し、今年3月末時点で6億5,400万人となった。これらの音楽サービスを有料で利用する人の数は第1四半期末時点で27.4%成長の2,840万人となった。オンライン音楽部門の収益は、前年同期比28%増となる16億1千万元(約256億8千万円)となり、そのうちサブスクリプションからの収益は7億1千万元(約113億3千万円)となっている。

これらの数字から分かることは、テンセント・ミュージックのサービスの無料リスナー数は巨大ではあるものの、収益という観点ではまだまだ初期段階だということだ。テンセント・ミュージックが運営するオンライン音楽サービスにおける、有料会員1人あたりの月間平均収益は8.3元(約132円)となっており、テンセントのオンライン音楽部門の収益である16億1千万元(約256億8千万円)に対して、Spotifyは同時期に16億9,000万ドル(約1,853億8,500万円)の収益を上げている。もちろん、これら二つの企業はそれぞれ上場しているとはいえ、全く別のビジネス形態をとっており、全く別の市場でサービスを運営していることは念頭に置く必要がある。

テンセント・ミュージック・エンタテインメントのCEOである彭迦信氏は「弊社のユーザーはストリーミング・サービスを介して音楽コンテンツをますます消費するようになっており、我々はこの傾向を利用して、今後数年間で徐々に有料ストリーミング・モデルに移行する予定です」と述べている。これは、無料リスナーを大規模に増やすより、中国における有料サブスクリプション会員を促進したいというレーベルの要望を反映する言葉となっている。戦略の鍵としては、ストリーミング・サービスの有料という壁の内側に音楽を増やすことが含まれており、欧米とはまた違った動きとなっている。

テンセント・ミュージック・エンタテインメントのソーシャル・エンタテインメント・ビジネスにも目を向ける必要がある。ソーシャル・エンタテインメント部門のモバイル月間アクティブ・ユーザー数は、前年同期比0.4%増の2億2,500万人となっており、有料でカラオケ・アプリやライブ配信アプリなどのサービスを利用するユーザー数は前年同期比12.5%増の1,080万人となっている。

有料会員1人あたりの月間平均収益は125.7元(約2,005円)となっており、オンライン音楽部門の額の15倍以上だ。テンセント・ミュージックのソーシャル・エンタテインメント部門からの収益は41億3千万元(約659億円)となり、全体の収益の72%を占めている。

ユーザー・セントリック方式取り入れへの呼び声高まるも、懸念点も

音楽ストリーミングサービスからのロイヤリティ分配方法をユーザー・セントリック方式(※各ユーザーからのロイヤリティを、そのユーザーが実際に聴いているアーティスト間でのみ分配するという方法)に移行させるべきかどうかという議論は、まだ音楽業界ではメジャーにはなっていない。しかし、この方式を求める声が徐々に大きくなっていることは確かだ。英・ブライトンにて行われたThe Great Escapeというカンファレンスでは、この議論について、新たな角度から意見が寄せられた。

議論の中で、作詞作曲家団体のThe Ivors Academy会長のクリスピン・ハント氏は、Appleがユーザー・セントリック方式を調べていたと述べた。

「ジャズなどのマイナーなジャンルは恩恵を受けるかもしれませんが…アメリカのApple Musicでは、テイラー・スウィフトが他のアーティストにお金を分けるような形になっています。数え切れないほど多くの人がテイラー・スウィフトの楽曲を再生していますが、彼女の音楽のロイヤリティはその他のアーティストとも共有されているからです。」

また、ハント氏は、中南米やインドなどが世界的ストリーミング再生数の大部分、つまりロイヤリティ支払いの世界的シェアを占めるようになれば、メジャー・レーベルもユーザー・セントリック方式に乗り気になるだろうと示唆した。

「ユーザー・セントリック方式でなければ、ストリーミング再生数のほとんどが米レーベルの管理外である、中南米やインドのアーティストにいくでしょう。そのため、大手レーベルは『やばい!ユーザー・セントリック方式に変えなきゃ!』となるに違いありません」

(しかし、インドはライセンス契約などでも他市場と異なる扱いを受けており、ロイヤリティ支払いに関しても、他市場とは分けられている。そのため、ハント氏が言うような、ユーザー・セントリック方式への転換期が必ずしも訪れるわけではないかもしれない。)

国際マネージャー団体EMMAのパー・クヴィマン氏はもう一つのポイントを指摘している。ユーザー・セントリック方式は、スウェーデンのような、より小規模の音楽市場のレーベルにとっても、より多くのストリーミング収益をもたらす可能性があるというのだ。

「スウェーデンのメジャー・レーベルは皆ユーザー・セントリック方式を求めています。アメリカやイギリスでこの方式を突き通すのはむずかしいかもしれません。ユーザー・セントリック方式の原則を我々はより深く理解しなくてはならず、この方式がもたらす影響についても、より多く研究をする必要があるでしょう。」

Featured Artists CoalitionのCEOであるルーシー・キャスウェル氏も注意喚起を促した。

「素敵なアイデアに聞こえますよね。でも、そもそも現体制で実行可能なのでしょうか?また、誰がユーザーに一番多く楽曲を提供できるかという財布シェア型に戻るのでしょうか?また、ユーザー・セントリック方式が実行されたら、お金がどこにいくのかについても考えなくてはならないでしょう。新方式が取り入れられても、ストリーミング・サービスはライセンサーに支払いをする必要があります。新たなロイヤリティ・システムが構築されたとしても、そのお金はきちんと受取人に計算、そもそも反映さえされるでしょうか?新方式を可能にすることや、誰が支払いを受けるべきかという優先順位を決めることももちろん大切です。しかし、我々は、一つのソリューションが全員に当てはまることが好きな業界ですが、今回はそうはならないでしょう。」