ディストリビューション

スタートアップ企業BoomyがAI生成音楽をストリーミング・サービスにアップロードする手助け

Boomyは、AIによって生成する音楽について模索するスタートアップ企業の一つで、今年初めに、ベータ版をローンチしている。テストユーザーは既にこの技術を利用して10万曲を超える楽曲を作成しているとのこと。Boomyはこの度、一般のユーザーにも招待制でウェブサイトにログインし、楽曲を作成できるようにするという。CEOのアレックス・ミッチェル氏は「我々のデータによれば、最初の5分で、自分が作った最初の曲に保存する価値があると分かるでしょう」とブログで述べている。

ミッチェル氏は、BoomyがAI生成音楽で何を達成しようとしているかについても語った。「我々は、意味ある音楽を作ることは、時間をどれだけ割いたかや、リソースの有無、才能の有無さえも問わず、シンプルかつ誰でもアクセスできるものであるべきだという強い信念を持っています。」

ミッチェル氏によると、そのアクセシビリティを推進すべく、Boomyは、最も手頃な価格のスマートフォンでも利用可能だとのこと。「我々は、近い将来、専用のモバイルアプリをリリースする予定ですが、boomy.comも最新のブラウザ標準で稼働させ続け、ユーザーがどのデバイスを使用していても、確実にサービスを利用できるようにします」

ここで興味深いのが、ユーザーがBoomy上で作成した楽曲をストリーミング・サービスにアップロードすることを、Boomyが積極的に推奨していることだ。「サービスを開始した最初の日から、ユーザーが自身の楽曲をダウンロードして、ストリーミング・サービスにアップロードしていることに気づきました。そのため、我々はこれをプレミアム機能の一部として提供することに決めたのです。」とミッチェル氏は述べている。「ベータ版でこの機能をローンチしてから、先月にはユーザーのため、SpotifyやApple Musicのようなストリーミング・サービスに何百もの楽曲を配信し、すでに何千回もの再生数を獲得しています。」

ミッチェル氏の投稿には、Boomyの自社アートワーク生成ツールによって作成された画像とともに、いくつかの楽曲へのリンクが貼られている。「この投稿を読むのに使っているデバイスが何であれ、インスタグラムに投稿するのと同じくらいの労力で、オリジナルの楽曲を作り、好みに合わせて編集し、ストリーミング・サービス上でロイヤリティを稼ぐことができるようになったのです。」

Boomyは、自社のサービスを利用して制作された楽曲をフィーチャーするSpotifyのプレイリストも作成している。AI音楽のスタートアップが、その技術の成果を商用のストリーミング・サービス上で公開するのは今回が初めてではないが、Boomyは、ユーザーが自身でこういった行動をするように奨励し、マネタイズの機会を実際に作っているという点で、他よりも一歩先に出ていると言えるだろう。

現時点では、プロのミュージシャンを脅かすような存在ではないが、Boomyによって作成された楽曲のいずれかが、今後、何千の単位を超える再生回数を稼ぎ、より大きな注目を浴びることができるか、注目したい。

Believeが配信前にフェイク楽曲を発見するためにACRCloudと提携

ディストリビューターのBelieveが、すでに著作権で保護されている他のアーティストの音楽を、デジタル音楽サービスにアップロードしようとする人をどのように取り締まるか、その計画を明らかにした。

Believeは、音声フィンガープリント(※)技術のパートナーとして、中国企業のACRCloudを選び、配信される前に、音楽をスキャンすることで、他のアーティストの作品でないことを確認するという。

最近では、Rihanna、SZA、Beyoncéなどのアーティストの過去楽曲や未発表曲が、様々なディストリビューターを通じ、第三者によってストリーミング・サービスに無断かつ異なるアーティスト名でアップロードされるという事件が起きている。

「顧客のコンテンツを保護することは、我々にとって最優先事項であり、ACRCloudとのコラボレーションによって、我々が音楽業界に提供するサービスがさらに発展することを期待しています。」とBelieveのフランソワ・ガーバー氏は述べた。

「著作権認識プロセスを自動化するためにBelieveと協力することができ、とても嬉しく思います」とACRCloudのペン・ドン氏はコメントしている。

今年4月には、ディストリビューターのCD Babyも、Audible Magicと同様の目的でパートナーを組むことを発表していた。

※以下、ACRCloudから抜粋
「音声フィンガープリントとは、それぞれのコンテンツが持つ固有の特性のことで、ちょうど、個人を特定できる人間の指紋と似ています。 音声フィンガープリントは、コンテンツの数秒間の音声から抽出され、そのコンテンツの独自性を識別するのに使われます。」

元Spotify幹部がDIYアーティスト周辺の「間違った話の流れ」を批判

2019年において、一部では「アーティストはレーベルを必要としない」という言葉に少々浮かれすぎる傾向がある。アーティストは近い将来、Spotifyなどのサービスと直接ライセンス契約を結んだり、直接アップロードできるようになるという見込みもあり、またディストリビューターと協力することで、レーベル・システムの外でも大きなオーディエンス(および収益)を築くことができるようになっているというのは事実だ。しかし、アーティスト・ダイレクト(アーティスト直)の収益が急成長していることは確かだが、録音原盤市場全体でみると、まだごくわずかな割合でしかないということもまた事実である。

元Spotify幹部のトロイ・カーター氏は、最近では、ディストリビューションをアーティスト開発およびレーベル・サービスと組み合わせたQ&Aという企業をローンチしたこともあり、アーティスト・ダイレクトというエコシステムにおける先導的な存在とも言える。しかし、フランスのカンヌで開催された国際音楽産業見本市のMIDEMにおける彼の基調講演では、アーティスト・ダイレクトというモデルに関する大言壮語を挫く立ち位置を示すこととなった。

「現状として間違った話の流れがあります。それは『アーティストは皆インディペンデントになりたがっているんだ!』というものです。テイラー・スウィフトはTuneCoreには参加したくないでしょう、悪気があって言うわけじゃありませんが。テイラー・スウィフトは契約期間が切れて、再びユニバーサルと契約することを選びました。お金のためにそうしたわけではありません。お金は必要としていないでしょう。ユニバーサル・ミュージック・グループのチームとの経験のためなのです」とカーター氏は語った。

しかし、カーター氏は同時に、ディストリビューターやマネージャー、そしてQ&Aのようなハイブリッド型の企業がレーベルに挑戦する機会についても言及している。「メジャー・レーベルのビジネスが続いているのは、彼らが備えているサポート・システムと、グローバルなインフラのおかげです。だから、ディストリビューターが同じような付加価値を持ち、経験、サービス、そして資本を持つことができれば、非常に競争力のある存在になり得るでしょう」とカーター氏は語る。ちなみに、Q&Aはすでにワーナー・ミュージック・グループとパートナー関係を結んでおり、多くのQ&Aアーティストがアトランティック・レコードと契約している。

カーター氏はさらに、既存のディストリビューション企業の批判もしている。Spotifyに入る前に行ったというディストリビューション分野に関する研究から、「ディストリビューション企業の多くは、ブラックホールのようなもので、アーティストが音楽をこれらのパイプに入れ込んでも、反対側から何が出てくるのかを知りません」と述べている。そして、「Spotifyにいる間、プラットフォームに多くの音楽が何の文脈もなく現れるのを見てきました」と言う。

一方で、Spotifyがアーティスト向けにアナリティクス・ツールを提供していたことに関して、「ほとんどの場合、アナリティクスの見方がわからない人や、アナリティクスの見方が分かっているにも関わらず、それに基づいた意思決定を行う方法を知らない人がいるのです。その時点では、データは無益と言えるでしょう。」と語った。

また、「現状は、とてもとても厳しいものです。三つの企業が全てのビジネスをコントロールしています。そして、これらの企業とビジネス関係にある出版社があります。ビジネスの構造上、ロングテールのアーティストが持続可能かつ広く普及する方法で金銭的収益を得ることができないようになっています。私は、これらの人々にも収益化を許す方法が何かしらあると思っています。全部さらけ出すわけにはいきませんが、それが、Q&Aで我々がやろうとしていることです。」とQ&Aのような会社が持つ可能性も強調した。

地位を確立しているAWALや、その他のメジャー・レーベルのディストリビューションおよびレーベルサービス部門の傍ら、こういった問題に挑戦している会社としては、やり方はそれぞれ異なるとはいえ、Q&A、UnitedMasters、Amuse、そしてアップル傘下となったPlatoonなどが当てはまるだろう。これら全ての企業の活動が伝統的なレーベルの契約構造にも影響を与えていることは間違いない。カーター氏が述べるように「最も付加価値をつけることができたものが勝つ」ということだろう。