歌詞

シンクパワーが見る、同期歌詞と音楽認識技術の明るい未来

シンクパワー(SyncPower)は「同期歌詞」コンテンツや、中国を本社とするACRCloudの日本総代理店として、「楽曲認識技術」を提供する日本企業だ。

同期歌詞サービス(サービスブランド名:「プチリリ」)は順調に成長している。韓国企業と仕事をする中で同期歌詞技術に巡り会い、シンクパワーを2006年に設立した代表取締役社長の冨田雅和氏は、「現在、シンクパワーは約270万曲もの歌詞データを保有しており、我々のビジネス・クライアントによって運営されている約30ものサービスおよび、自社アプリを通じてユーザーに提供しています」と語る。

「音楽の魅力を伝える上で、同期歌詞技術を提供するサービスが非常に重要な役割を果たすと確信していました。音楽を聴きながら、同期した歌詞を表示することで、リスナーは歌詞を視覚的にも楽しむことができます。音楽ファンは、各楽曲の魅力をより深く、そしてより豊かに楽しむことができるのです。」

シンクパワーの事業は、同期歌詞データを作成し、楽曲ファイルに、歌詞データを埋め込む電子透かしの技術から始まった。しかし、時が経ち、多くの企業に同期歌詞技術を提供するにつれ、膨大なコンテンツ・ライブラリを管理および提供するノウハウも重要な資産となったという。

「我々の主な顧客は、国内外の音楽DSPです。私は、音楽における必須要素である歌詞コンテンツを提供するということにおいては、シンクパワーを音楽サービス・プロバイダとして、また、音楽に関連する膨大なメタデータを管理・提供するという意味では、データベース企業として捉えています。」と冨田氏は語る。

シンクパワーのパートナー企業の一つに、日本のスタートアップ企業の「COTODAMA」がある。COTODAMAは、イギリスの「アビー・ロード・レッド」というアクセラレーター・プログラムに参加していたことでも知られる。COTODAMAが開発した製品として、楽曲再生時に、歌詞をアニメーションとして表示するリリックスピーカーが高く評価されている。

冨田氏は、COTODAMAのリリックスピーカーについて、「最もクールなデバイスの一つ」だと賞賛しており、その可能性を熱心に語る。「各楽曲の特徴に応じて、同期歌詞を視覚化し、表示することができる製品です。現在30カ国で販売されているこの製品を、当社のコンテンツと技術がサポートできることを大変嬉しく思っています」

シンクパワーの技術は、他にも、2018年にNTTグループ傘下のNTTソルマーレ社と共同でローンチした、Lylink(リリンク)というアプリにも使用されている。Lylinkは、音楽の好きなフレーズに、写真やオリジナル・メッセージを合わせた動画を作成し、友人に送ることができるアプリだ。

「プチリリ」は、グーグルとアマゾンが提供するスマートスピーカーでもすでに利用可能となっている。しかし、これはシンクパワーの技術が今後更に重要となる新たなデバイス・カテゴリーの始まりに過ぎない。今後、スマートスピーカーは、スクリーン付きのスマートディスプレイになると言われているためだ。

電通デジタルが最近日本で行った調査では、「70%を超えるスマートスピーカー・ユーザーがスマートスピーカーで音楽を聴いていると答えており、音楽が最もよく使用されている機能です」と冨田氏は述べる。

「現在、我々のサービスは、楽曲のタイトルを伝えるだけにとどまっています。しかし、近い将来、スクリーン付きのデバイスが主流になることは明白です。その頃には、同期歌詞機能が必須となり、大きなビジネスチャンスに繋がるであろうと私は信じています。」

また、シンクパワーは自動コンテンツ認識分野で最も定評のある企業の一つであるACRCloudと協力し、オーディオ・フィンガープリント技術と同期歌詞機能を組み合わせることで、サービスを拡大している。

日本の音楽ストリーミング市場は、国際レコード産業連盟(IFPI)によると、2018年には収益32.6%増と成長し続けており、シンクパワーはこのことにも可能性を見出している。「ストリーミング市場が成長するにつれ、ユーザーは定額で膨大な量の音楽を楽しむことができるようになり、歌詞表示へのニーズも高まっていくでしょう」と冨田氏は語る。

「音楽メタデータとACR技術は、数千万曲からお気に入りの音楽を見つけるためにも重要なのです。我々は、音楽アグリゲーターや配信会社とも提携し、より多くの曲にタイムリーに対応できるシステムを構築しています。我々の役割も、今後もっと重要になってくるでしょう。」

シンクパワーは、国内市場において、様々なDSPと取引をしてきており、日本国外への展望も抱いているという。「日本のアーティスト、レーベル、プロダクションも同じように海外展開に照準を合わせているため、シンクパワーの役割も増すと考えています。我々の豊富かつ高品質なコンテンツを海外でも合法的に提供できるよう、すでに、ライセンスに強い企業数社とも話を進めています」と冨田氏は説明した。

また冨田氏は、楽曲認識技術を使用し、放送事業者によって再生された楽曲のレポートを提供する事業を拡大していきたいと話す。「各ビジネス分野は少しずつ異なりますが、音楽サイクルについて考えると、全てが繋がっていると思うのです。音楽を作る、新しい音楽に出会う、歌詞とともに、音楽をより深く楽しむ、楽曲がライセンス・レポートに正しく反映される、そして、作詞作曲家およびアーティストに還元されるという流れです。このサイクルに貢献するという点で、全てが繋がっているのです。我々は、シンクパワーのサービスの基盤となる、歌詞を中心とした膨大なデータベースを引き続き、最大限活用していくことに努めます。」と冨田氏は締めくくった。

Geniusが検索エンジン内の歌詞についてグーグルを批判

歌詞を集めたサイトを運営するGeniusとグーグルが、歌詞のコピー疑惑騒動を巻き起こしている。遅かれ早かれ、グーグルの検索結果向けにコンテンツを提供する同分野企業のLyricFindなども渦中に巻き込まれることになりそうだ。

Geniusはウォール・ストリート・ジャーナルに対して、グーグルの検索結果における「OneBox※」カード内で提供されている歌詞の一部が、Geniusのサービスから直接引用されていると語った。証拠として、Geniusは歌詞の中で、直線のアポストロフィ記号(')と曲線のアポストロフィ記号(‘)を交互に使用しており、モールス符号に変換すると「Red Handed(直訳:現行犯)」と綴られるようにしていたと話している。つまり、このアポストロフィ記号の組み合わせがGenius以外のサイトに現れた場合、面倒事が起きていると分かるということだ。

※「Google Onebox(グーグル ワンボックス)」とは、検索キーワードの種類によっては検索結果の上部に、求めている情報に直結した結果を表示する特徴のこと。

Geniusの最高戦略責任者であるベン・グロス氏は米テクノロジー・ニュースメディアのThe Vergeに対し、「グーグル検索結果のOneBox内で、Geniusからコピーした歌詞が表示されているという紛れもない証拠を何度も何度も示している。これは深刻な問題であり、グーグルはこれに対処する必要がある」と語っている。Geniusによると、これまでに同様の事例は100件以上見つかっているとのこと。

テクノロジー・ニュースサイトのEngadgetは、この問題に対するグーグルの声明を報道している。グーグルは、検索エンジンに表示される歌詞は「様々なソースからライセンスされており、ウェブ上のサイトから削り取られたものではありません。我々はデータの質とクリエイターの権利を真剣に捉えており、我々の契約条件に対して、我々のライセンス・パートナーに説明義務があると考えています。我々が契約を結んでいるデータ・パートナーと現在この問題について調査を進めており、パートナーが適切にこれらを実施していないと判明した場合には、契約を終了いたします。」と述べている。

LyricFindはグーグルとパートナー契約を結ぶ企業の一つだが、同社のCEOであるダリル・バランタイン氏はウォール・ストリート・ジャーナルに対して、「我々の歌詞はGeniusをソースとはしていません」と語っている。事件に関係している企業は全て、今週中にでも原因と責任の所在の究明に時間を費やすことになるだろう。また、今回の問題には、競争的な意味合いも含まれている可能性がある。Geniusは、グーグルが検索エンジンにおいて歌詞に力を入れ始めてから、Geniusのサイトのトラフィックが減少し始めたとも語っている。

競争的な問題ではあっても、著作権的な問題とまではいかないことにも注目したい。Geniusは歌詞を音楽著作権所有者からライセンスしており、どんなアポストロフィ記号を使用したとしても、歌詞を所有していることにはならないからだ。ちなみに、この騒動は、Geniusが提供する、歌詞の注釈(こちらはGeniusのオリジナル素材となる)については関係がなく、グーグルがすでに(グーグル自身のライセンス契約とパートナーシップを通じて)使用する権利を得ている歌詞についての問題となっている。

とはいえ、Geniusの怒りは無理からぬことであり、グーグルやその他の歌詞パートナー企業は原因と責任の所在を突き止めることが優先事項となるだろう。