イギリスでは、COVID-19パンデミック下における芸術及び文化的業界の救済に対する沈黙への懸念が高まる中、ミュージシャンとイギリスの音楽業界が一体となって、政府からの財政支援を求めている。先週末からは、イギリスのサービス業界の多くが営業を再開しており、音楽業界では、音楽の会場や劇場、美術館よりも、パブの方が本当に優先事項なのかという声が高まっていた。

 (これは、感情的かつ複雑なトピックだ。理論的に言えば、オールスタンディングのコンサート会場よりも、パブの方が、ソーシャル・ディスタンスを維持しやすいかもしれない。しかし、実際には、恐らくそうではないだろう。たった一つのパブ・チェーンが、ライブ音楽業界全体よりも多くの政府援助を受けていたという主張がツイッターで広く拡散されていたものの、議論は、ライブ会場がパブと同時期に再開すべきという主張では決してなく、むしろ、政府が必要としている箇所に救済支援を提供すべきであり、また、他の分野と同様に、再開に向けた何らかのロードマップを公開すべきであるということが焦点となっていた。)

 日曜日には、救済支援に関する最初のニュースが発表された。英国の芸術、文化、遺産業界は、「世界を牽引する15億7千万ポンド(約2,108億円)という額の救済支援」を受け取ることになるという。つまり、ライブ音楽や演劇、舞台芸術だけでなく、美術館やギャラリー、独立系映画館、歴史的宮殿なども含まれるということだ。これには、「文化団体」への2億7千万ポンド(約362億6千万円)の返済可能なローンと、8億8千万ポンド(約1,181億8千万円)の助成金が含まれており、ローンは「寛大な条件」になると約束されている。支援への申し込みは、「今後数週間以内」に開始され、その際に、さらなる詳細が公開されるとのこと。

 イギリス政府による、「世界を牽引する」ことへの執着(ちなみに、「世界を牽引する」COVID-19接触追跡システム計画はあまり成功しなかった)はさておき、誰が支援の対象となり、誰がその決定を下すかという詳細が何よりも重要になるだろう。現在のところ、英国アーツ・カウンシル、イングランド歴史的建造物・記念物委員会、ナショナル・ロッタリー・ヘリテージ・ファンド、英国映画協会などの団体が挙げられているが、音楽業界団体が関与するかどうかは今のところ不明となっている。

 英国の音楽団体は、音楽分野および関連分野の重要性が認識されたことを祝う反応を見せているが、同時に、詳細への注意も促している。現時点における重要な質問としては、まず、支援が会場やライブ音楽企業だけでなく、アーティストやそのチームにも及ぶかどうか、そして次に、公的資金の実績がある会場に支援の重点が置かれるのかどうかであり、場合によっては、一部の音楽会場が不利になる可能性もある。現在、これらの問題およびその他の問題を徹底的に議論するため、緊急の話し合いの場が設けられようとしている。

 イギリス国外の人々にとって、あまり関係のないニュースのように思えるかもしれない。しかし、イギリスの音楽業界がいかに救済を求めて団結し、要求を実現させたかについては、学ぶべきところがあるのではないだろうか。