米著作権使用料を巡って、出版社などとストリーミング・サービスが対立している問題について、Spotifyが自社のスタンスが米国出版社協会(NMPA)の言う「作詞作曲家コミュニティに対する宣戦布告」ではないことを強調した。

Spotifyは、「Spotifyを含むストリーミング・サービスによる共同声明および控訴は、全米著作権使用料委員会(CRB)がによる、作詞作曲家ロイヤリティ引き上げ案の要素を明確にするための手段」だったと主張している。

さらに、Spotifyは作詞作曲家に対するロイヤリティが上がることに異議はないとするものの、CRBによる新レートが、歌詞や動画を考慮しないものであるとして、音楽サービスが音楽とその他のサービスをセットにして売り出すことを難しくしていると主張した。

NMPAはSpotifyの声明に対し、素早く反論を繰り広げている。

「SpotifyのPRチームは多大な時間と労力を費やして、アーティストや作詞作曲家を騙すための声明を作成したのでしょう。アーティストや作詞作曲家は馬鹿ではありません。CRBは、作詞作曲者へのロイヤリティ引き上げを命じ、Spotifyはそれに反対した。それだけのことです」

CRBによるロイヤリティ引き上げに関する議論が白熱する中、Spotifyは別の動きも見せている。Spotifyは欧州委員会に、App Storeなどにおいて、アップル社がApple Musicなど自社サービスが有利になるような市場独占的行為をしているとして、苦情を申し立てた。

SpotifyのCEOであるダニエル・エク氏は次のように語っている。

「アップル社は世界で10億人以上の人々が利用している、インターネットへの入り口とも言えるべきプラットフォームを運営しています。アップル社は、iOSプラットフォーム、そしてApp Storeの運営社であり、同時にSpotifyのようなサービスの競合でもあります。理論的には、これに問題はありません。しかし、アップル社の場合は、毎回自社サービスに対し、不当に優位性をもたせているのです。」

エク氏はアプリ内課金に対する30%のアップル社による「税金」に言及し(ちなみに、ユーザーが1年以上課金を続けた場合は15%まで下がるとのこと)、「この税金を払うとなると、我々はプレミアム・プランの価格をApple Music以上に高く設定せざるを得なくなります。しかし、顧客のために価格競争力を保つ必要もあり、そんなことはできないのです。」と述べた。

さらに、エク氏は、Spotifyがアプリ内課金を避けようとすると、「アップル社が、技術的制限や体験を制限するような規則を適用させようとする」と非難している。例としては、「アプリを超えた顧客とのコミュニケーションを制限」や、「Spotifyやその他競合サービスをアップル社のSiri、HomePod、Apple Watchなどのサービスから除外」していたことなどを挙げている。

Spotifyの申し立てに対し、アップル社は「誤解を招く発言」だとして非難している。

「SpotifyはApp Storeを長年に渡り使用し、ビジネスを劇的に成長させてきたにも関わらず、App Storeに一切貢献することなく、App Storeの顧客から得ている相当額の収益を含む、App Storeのエコシステムから生じる利益を全て独占しようとしています。」とアップル社は述べた。

さらには、「アーティストの楽曲を配信しながら、それを制作するアーティスト、ミュージシャンや作詞作曲家にも十分に貢献せず、裁判沙汰にまでしています」として、CRBのロイヤリティ引き上げに対する控訴の姿勢も非難している。

「我々はこれまで200回近くにも及ぶSpotifyアプリのアップデートを承認・配信してきました。結果、Spotifyアプリは3億回以上もダウンロードされています。我々がSpotifyに調整を求めたのは一度きりで、それはSpotifyが他のアプリが従っているルールを回避しようとした時でした。」とアップル社は伝えている。

さらに、アップル社は、自社のSiriとAirPlay2の機能に関して、Spotifyに何度も連絡を取ったものの、Spotifyは「現在取り組んでいると言い、我々は手伝う準備がいつでもできている状態だった」と反論している。

さらに、アップル社がSpotifyのアップル・ウォッチ用アプリのローンチを妨げたとするSpotifyの主張に対し、次のように述べている。

「2018年9月にSpotifyがアップル・ウォッチ用のアプリを提出したとき、我々は他のアプリと同様のプロセスとスピードでそれを認可しました。Spotifyは、現在では、ウォッチ向け音楽カテゴリーで最もダウンロードされているアプリにもなっています。」

アップル社はさらに、iOSユーザーの大多数が、App Storeには何の貢献もない、Spotifyの広告でサポートされている無料プランを使っていること、そして、Spotifyの顧客の大部分がモバイル事業者との連携から生じており、その場合は「App Storeを介していないが、Spotifyは小売業者や通信事業者に同様のアプリ配信手数料を払っている」ことを指摘した。

「アップル社は、Spotifyと我々のユーザー間のコネクションを作ってあげています。我々はユーザーがアプリをダウンロード / アップデートするプラットフォームを提供しています。我々はSpotifyがアプリを構築するサポートをするソフトウェア開発ツールを共有しています。そして我々はユーザーが安心してアプリ内取引を行い、安全に支払いができるシステムも構築しました。Spotifyは、これらの利点を全て維持しながら、収益の100%を受け取ることを要求しているのです」とアップル社は強調している。

これに対し、Spotifyは「我々が苦情を申し立てたのは、アップル社の行動が競争と消費者に害を与え、法律に明らかに違反しているからです。アップル社による声明で、iOS上のSpotifyユーザーがSpotifyの顧客ではなく、アップル社の顧客であると示唆されたことが何よりの証拠です」と更なる反論を繰り広げている。

欧州出版社協議会は、Spotifyに賛同し、「Apple社は、App Storeを利用する全てのアプリの利用規約を決め、顧客との関係性を支配し、貴重なデータを保持し、独自の支払いシステムを利用することを要求し、消費者によって支払われた額の30%を課税している」と述べた。

さらに、ストリーミング・サービスのDeezerとAnghamiも、Spotifyのアップルに対する苦情を支持しているとのこと。