ワーナー・ミュージック・グループが最新の決算を報告し、収益が、前年同期比10.4%増の10億6千万ドル(約1,115億6千万円)となったと発表した。デジタル収益は12.5%成長の6億4,800万ドル(約682億1千万円)となり、全体の61.2%を占める結果となったという。

ワーナー・ミュージック・グループの録音原盤収益は13.8%増の9億1,300万ドル(約961億1千万円)となったが、出版収益は7.5%減の1億4,700万ドル(154億7千万円)となった。出版収益減少の理由としては、「市場シェアの低下と特定のカタログの管理権喪失」が挙げられている。

CEOのスティーブ・クーパー氏は、ワーナー・ミュージック・グループの成長は全てストリーミングによるもの」という想定を否定した。クーパー氏は、「ストリーミングのおかげで弊社の事業が回復したというのは、物事を単純化しすぎていると思います。我々のアーティストおよび作詞作曲者の才能とクリエイティビティ、そして、我々が行なった彼らへの投資と専門知識の活用無くしては、成長は生まれなかったでしょう」と決算報告とともに述べている。

「これらのプラットフォームでリリースされる音楽の膨大さによって、優れたアーティストや作詞作曲者が発見されづらくなっています。ストリーミング時代において、消費者は指先だけで5,000万曲を聞くことができ、その数は1日4万曲以上のペースで成長しています。だからこそ、我々の録音原盤および出版事業が、これまでにも増して関連性を持つのです。大勢の中から存在感を突出させるために。」

続けて、クーパー氏は、Spotifyとのライセンス更新交渉についても言及している。「我々は、ストリーミング・サービスへ新しい素晴らしい音楽を着実に提供するとともに、クリエイティブ・コミュニティに利益をもたらすスタートアップ企業、新たなビジネスモデル、および起業家を支援しています。同時に、我々は、アーティストや作詞作曲者の生計を守るために、音楽が適切に評価されるようにしなければなりません。世界的なディストリビューターとの間で、そういったバランスを取り、正しい妥協点を見つけることは、決して簡単なことではありません。我々の競合他社の選択とは必ずしも一致しない、戦略的決定を下さねばならない時もあるということです。」

クーパー氏のコメントは、最近ワーナー・ミュージック・グループの幹部がストリーミングに関してタカ派的姿勢を示しているのとパターンが一致している。グローバル事業開発及び戦略シニア・バイス・プレジデントであるトレーシー・ガードナー氏は、仏カンヌで開催された国際音楽産業見本市MIDEMに登壇した際、レーベルは音楽ファンとより直接的な関係を築くことを望んでいるという警告からスタートしている。「ストリーミング・サービスは今や、ファンと直接的な関係性を持つようになっていますが、我々はそれを取り返すべきだと思っています」

続けて、ガードナー氏は、ストリーミングの契約において「ストリーミング・サービスにおける我々の市場シェアが減ることがないよう、保護する方法を見つける」必要があると話している。具体的には、「ポッドキャストのように、リスナーの注意を巡って対立するもの」の存在を挙げていた。

メジャー・レーベルが最も著名なストリーミング・サービスとの交渉中に、ストリーミングに関して強気な発言をすることは、驚くべきことではない。クーパー氏も、ワーナー・ミュージック・グループの成長において、ストリーミングが引き続き重要な役割を果たすであろうことは認めている。「近い将来については、楽観的です。私の見解では、我々は引き続き成長し続けることができると思います。直線とまではいかないかもしれませんが、ストリーミングが引き続き成長することにより、ストリーミングが新興市場に移っていっても、我々は着実に成長し続けるでしょう。ここ数年の成長具合と同じとまではいかなくても、この先数年は大丈夫でしょう」とクーパー氏は語る。

ミュージック・ビジネス・ワールドワイドは、世界三大メジャーのストリーミング成長に関わる数字を分析している。2019年上半期、世界三大メジャーは、録音原盤から7億900万ドル(約746億1千万円)のストリーミング収益を追加したが、この数字は、前年上半期の8億7,700万ドル(約922億9千万円)よりも少ない額となっている。とはいえ、メジャー・レーベルは1日辺りストリーミングから2,300万ドル以上(約24億2千万円)の収益を生み出している。

クーパー氏は、ヴィヴェンディが、最大20%までのユニバーサル・ミュージック・グループの株をテンセントに売却する交渉をしたことにより、ワーナー・ミュージック・グループが自身の合併買収の野望へ資金確保するために、新たな戦略的投資、もしくは株式公募に踏み切る可能性はあるかという記者の質問に対しては、次のように答えている。

「現時点での現状は良い調子ですが、将来について絶対に確実なことは何もありません。我々は、引き続き、ワーナー・ミュージック・グループがアーティストや作詞作曲家とともに最高の音楽を届ける企業であるということを世界に示し続けるだけです。」