今月の初め、Spotifyがアーティスト・プロフィールに「自分自身、または他の助けを必要としているアーティスト、もしくは自分が支援したい別のイニシアチブのために、認証済みの資金調達ページへのリンクを貼る」機能を近日中に実装予定であることを報道した。

「Artist Fundraising Pick」、または日本語版だと「アーティストが選択した支援団体」と呼ばれる本機能がついに公開され、Spotify for Artistsダッシュボードのトップにあるお知らせの「Get Started」というハイパーリンク部分をクリックすることで、アーティストは資金調達へのページをリンク付けすることができるようになった。Spotifyは、アーティストがリンク可能な支援団体の詳細についても明らかにしている。

「アーティスト・プロフィールにある『アーティストからのおすすめ』欄でハイライトしたい音楽を選べるのと同じように、アーティストは支援団体など、募金先もハイライトできるようになりました」とSpotifyはブログで説明している。

アーティストは、自身や、バンド、クルーなどのために、Cash App、GoFundMe、PayPal.meという三つのパートナーから、好きなサービスを選んで、資金を調達することができる。ちなみに、Cash Appは、Spotifyと密接なパートナーシップを築いている。

「彼らは、この困難な時期に、アーティストのために、100万ドル(約1億730万円)の救援活動を惜しむことなく確立しました。アーティストが選択した支援団体として、Cash Appを選択し、『$cashtag」のユーザー名を入力し、Spotifyを通じて、金額関係なく、少なくとも一つ以上の寄付を確保すると、Cash Appが用意した100万ドルに到達するまで、Cash Appのアカウントに追加で100ドル(約1万円)を受け取ることができます。」とSpotifyは発表している。残念ながら、Cash Appは現在日本ではダウンロード不可となっており、利用できるのは米国と英国のアーティストに限られているようだが、Cash Appを使うアーティストに対する寄付に関しては、世界中から行うことができるとのこと。

現在のところ、PatreonやKickstarterなどのクラウドファンディング・プラットフォームや、BandcampなどのD2Cプラットフォームなどはサポートされていない。Spotifyは、最初の3パートナー以外にも、リストを拡大していきたいと考えているという。Spotifyの担当者はMusic Allyに対して、「これらサービスは現在確認されている最初のパートナーです。今後、できる限り追加していきたいと考えています」と語った。

また、アーティストは、上記の3サービスで自分自身や自分のチームのために資金調達する以外にも、Spotifyが「COVID-19 Music Relief」プロジェクトの一環として協力している、音楽救済団体や組織にファンを誘導し、寄付を促すことも可能だ。

ローンチ当初は、米国のMusiCares、英国のPRS FoundationとHelp Musiciansのみが参加していたが、その後、フランスやドイツ、アイルランド、スウェーデン、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、ブラジルなどのパートナー団体もさらに追加されている。

Spotifyのブログ投稿では、今回の機能が、COVID-19世界的大流行の現フェーズのみの短期的なものではない可能性も示唆されている。「COVID-19危機下の緊急性と影響を考慮して、我々はこの新機能を開発し、できるだけ多くのアーティストに提供するために、できる限り迅速に取り組んできました。しかしながら、我々はこれまでに、このような資金調達機能を構築したことはありません。今回は最初のバージョンであり、音楽コミュニティにとって可能な限り役立てる方法を学びながら、機能は進化していくと考えています」とSpotifyは説明した。

ほとんど選択肢がないというのが実情かもしれない。新機能が人気となり、アーティストにとって有用であることが判明すれば、現在の危機が緩和された後も、Spotifyが機能を削除しようとすれば、批判の嵐が巻き起こることは想像に難くないだろう。

恐らく、今回の機能は、将来的に、ファンからの直接的な資金提供機能を拡充するためのテストとして見るべきなのかもしれない。投げ銭であれ、月額サブスクリプション・スタイルであれ、ファンからの直接的な資金提供機能は、Spotifyなどの企業にとって、デリケートなトピックである可能性は、以前から示唆されてきた。間接的に、ストリーミングによる、アーティストのロイヤリティに問題があることを認めることになるからだ。

しかし、Music Allyでは、むしろ楽観的にこれを捉えている。ストリーミングがチケットやグッズへの入り口になりうるのであれば、将来的に、ファンによる直接的な資金提供の役割を果たせない理由があるだろうか?特に、大手ストリーミング・サービスが、ファンからの資金調達というアイデアを支援すれば、現在多くのアーティストが、ファンに対して金銭を求めることを恥とするのを打破する上で役にたつ可能性は多いにあるだろう。