Spotifyは最近、自社プレイリストの「New Music Friday」についてはあまり言及しておらず、むしろ、アーティストやレーベルが、プレイリストへの楽曲掲載を、マーケティングにおける主要目標にするのをやめさせようとしていた節もある。Spotifyは、アーティストは、より幅広いプラン(もしくはストーリー)を持つ必要があり、早すぎる段階、もしくは間違った楽曲で、「New Music Friday」に掲載されることは、逆効果になる可能性もあり、Spotifyにおける他の多数のプレイリストにも多くの機会が用意されている、というメッセージを発信し続けていた。

このメッセージは、業界に受け入れられ、行動に移されてきたが、「New Music Friday」はSpotifyの主要プレイリストに変わりなく、このプレイリストが世界的にブランディングし直されたことは注目すべきニュースと言えるだろう。とはいっても、プレイリストの名前や構造に変わりはない。プレイリスト自体の核は変わっておらず、Spotifyの編集チームが注目を集めたい最新リリースがまとめられているが、プレイリストのロゴとビジュアルは大きく変わることとなった。また、Spotifyは、ロサンゼルスとニューヨークでの広告板に加えて、ソーシャル・メディアでも、このイメージ刷新を広く宣伝している。

また、Spotifyは、360万人以上のフォロワー数がいる、米国版「New Music Friday」に掲載されたアーティストには、Spotifyの年間まとめのプロモーションと同じような、プロモーション用のカードを用意し、SNS上で、「New Music Friday」にフィーチャーされたことを宣伝できるようにしている。

イメージ刷新を発表するブログ投稿で、Spotifyは「New Music Friday」のローカル版も、今後数カ月のうちに、同じプロモーション機能を使えるようにする予定であると示唆した。ちなみに、「New Music Friday」の全てのバージョンを合わせると、フォロワー数は800万人以上となっている。

「我々のプレイリストは、長い間、新しい音楽発見の場であり、アーティストおよび彼らの新しい楽曲の成功への重要なバネとして捉えられてきました。新しく改良されたバージョンを提供できることを嬉しく思います」とSpotifyの音楽部長であるジェレミー・エルリック氏は述べている。

Chartmetricのデータによると、アメリカ版「New Music Friday」は、「最大のプレイリストである「Today’s Top Hits」(フォロワー数2,580万人)や、「RapCaviar」(フォロワー数1,270万人)、「Viva Latino」(1,060万人)はもちろん、「90s Rock Anthems」や「Top Hits Philippines」、「Songs to Sing in the Shower」などに続く、41番目に大きなプレイリストであるという。しかし、フォロワー数だけに惑わされてはならない。「New Music Friday」でパフォーマンスの良い楽曲がこれらの大きなプレイリストに掲載されるようになっており、「New Music Friday」が重要なバネとしての役割を果たしていることは間違いない。

ちなみに、「New Music Friday」には日本版もあり、現在のフォロワー数は44,000人以上となっている。また、日本でのリリース日に合わせた、「New Music Wednesday」も存在しており、こちらはフォロワー数76,000人以上となっている。「New Music Friday Japan」はイメージ刷新の対象となっているが、現在のところ、「New Music Wednesday」に関しては、対象となっていないようだ。

日本でのフォロワー数は、世界的な数字と比較すると、まだまだ少ないが、国際的なマーケティングの観点で言えば、「New Music Friday」が重要な役割を果たすことは間違いない。しかし同時に、プレイリストに載って再生数が増えることが必ずしもファン・ベースの成長に繋がらないという、ドライストリームの矛盾の問題もあるため、特に駆け出しのアーティストは気をつける必要がある。

また、調査会社のICT Research &Counsultingは、2019年末までに、日本におけるストリーミング有料加入者数は1,140万人、無料お試しユーザー数は1,020万人、2021年末までに、有料と無料を合わせたストリーミング加入者数は2,370万人まで増加すると推定している。また、加入者の多い音楽ストリーミング・サービスは順に、Amazon Prime Music、Apple Music、LINE MUSIC、SpotifyとなっているとICT Research & Consultingは予測しているとのこと。