先週金曜日に、中国大手テクノロジー企業のテンセント(騰訊)が、ワーナー・ミュージック・グループの株を大量に購入していたことが明らかとなったが、実際にいくら投資されたか報道には混乱があった。ウォール・ストリート・ジャーナルは2億ドル(約214億5千万円)と主張し、ミュージック・ビジネス・ワールドワイドは約1億ドル(約107億2千万円)と主張していたからだ。しかし、結局のところ、どちらの報道も正しかったようだ。

 2018年後半にテンセントが新規株式公開で独立させた音楽ストリーミング(およびカラオケ/ライブ配信)事業は、ワーナー・ミュージック・グループが上場した6月3日に、ワーナー・ミュージック・グループのクラスA普通株式を400万株取得している。これは1億ドル相当の株であり、ミュージック・ビジネス・ワールドワイドの報道はこの数字に基づいている。

 ただし、親会社であるテンセント・ホールディングス傘下の黄河投資(Huang River Investment Limited)も同じく400万株を取得しており、テンセントの事業合計で2億ドルがワーナー・ミュージック・グループに投資されており、ウォール・ストリート・ジャーナルの数字はこちらに基づいているというわけだ。

 以前の取引に加えて、今回の株式取得も、主要な音楽企業とストリーミング企業がお互いに保持している株式の図をさらに複雑にしている。テンセント・ミュージックとSpotifyは、2017年の契約後、お互いの株式を10%近く保有している。また今年には、テンセント・ホールディングス主導のコンソーシアムがユニバーサル・ミュージック・グループの株式を10%取得しており、さらに追加で10%を購入するオプションも有効となっている。

 ワーナー・ミュージック・グループとソニー・ミュージックは、テンセント・ミュージックの株式を保有している可能性があり、ユニバーサル・ミュージック・グループはSpotifyの株式を少数所有している。そして今、テンセント・ホールディングスとテンセント・ミュージックは、ワーナー・ミュージックの株式も少数(ワーナー・ミュージック・グループの総株式の1.6%)保有しているというわけだ。

 このような図式は、今後のライセンス及び競争にどのような意味をもたらすのだろうか?メジャー・レーベルはSpotifyの株式を保有していても、過去に交渉の過程でSpotifyを苦境に立たせるのをやめたわけではないが、もしSpotifyもライセンス許諾側の株式をかなり保有していたら、取引はどのように影響を受けていただろうか?とはいえ、中国のNetEase Cloud Musicなどのテンセントの競合企業や、テンセントとユニバーサル・ミュージック・グループの取引に反対していた欧州の団体IMPALAなどのインディペンデント音楽コミュニティは、今後数カ月に渡って、これらの投資関係の図式を注意深く監視し、多くの議論が交わされることになるだろう。

 音楽業界は現在、二つの巨大な企業グループ群に支配されている。一方は世界三大メジャー・レーベル群であり、もう一方は巨大プラットフォームおよびテクノロジー企業群だ。しかし、現在では、現状の市場シェア、および、将来的な成長を後押しすると予想されているトレンド(アーティスト・ダイレクトなど)両方の観点で、インディペンデント・セクターも繁栄してきている。メジャー・レーベルとテクノロジー企業間の取引を、インディペンデント・セクターの成長への脅威とみなすより、成長を取引や競争に対する監視を強化するものとして考えた方がいいかもしれない。