Spotifyがポッドキャスト戦略を強化しているのは知られていますが、新しいテストも随時行っています。

米国では100人以上のポッドキャスターに対してサブスクリプション機能を今年から始めており、8月に入って全ての米国ユーザーに課金システムが開放されました。SpotifyのAnchorアプリを使うポッドキャスターは最大20種類の課金プランを選べる設定になっています。

Spotifyは先日、同社のツールを使うポッドキャスターのメリットとして「クリエイターが有料登録者の連絡先リストをダウンロードできるようにし、登録者とのエンゲージメントを深め、より多くの特典を提供できるようにする」機能を新たに追加しています。

Spotifyはブログで「私たちはクリエイターがリスナーとの関係を所有したいと考えていることを理解しており、後押しするつもりです」と説明します。区別しなければならないのは、ポッドキャスターは番組全てのリスナーやフォロワーの登録情報を得られるわけではないということです。

ポッドキャスターに登録者情報を共有するSpotifyの新しい取り組みは意欲的で、より多くの配信者がAnchorアプリやSpotifyを使う糸口になるはずです。

しかし、ポッドキャスターがリスナーとの関係を自分たちで構築できるのに、なぜ同じ関係構築をアーティストや音楽業界には開放しないのでしょうか?こうしたデータの共有は、アーティストやレーベルは長年望んできています。Spotifyはプライバシー保護の観点から、利用者データを第三者と共有するには当然ながら慎重です。しかし、可能性の話で考えれば、例えば「アーティストのメーリングリストに登録するボタン」のようなオプションがアーティストページに追加されても不思議ではありません。

Spotify内でアーティストとポッドキャスターをどう捉えるか、議論する必要があります。Spotifyはポッドキャスト番組のためにサブスクリプション機能を開発するなどクリエイター支援を行っています。同じように、アーティストのための機能を開発したり注力するチャンスがSpotifyは十分にあるのです。

もしSpotifyのリスナーが追加料金を音楽再生に支払うとしたら、アーティストからの特典には何を期待するでしょうか?決済システムや分配システムはどのように機能するでしょうか? Spotifyのポッドキャストのサブスクリプション機能は、BandcampやPatreonなど他社プラットフォームの分析と同様に、クリエイターに提供する機能のヒントを示しています。

今年3月、CEOのダニエル・エクがこの領域について次のように発言しました。「これまでの音楽は、ストリーミング収入で収益化してきましたが、クリエイターは、他のプラットフォームでファンベースから収益化する方法を考えなければなりませんでした。しかし、将来的にはSpotifyでも、ファンやスーパーファンから収益化できるようになるはずです」

有料ポッドキャストの登録者情報をクリエイターに共有することもその一環です。そしてこれは潜在的なメリットの一部に過ぎません。ポッドキャスターがリスナーの登録情報を知ることができ、アーティストができないのは、不公平との意見もあるはずです。しかし今後、より大きいアーティスト・コミュニティにも有料ポッドキャストのような仕組みが展開される可能性を考えれば、この試験的な取り組みをポジティブに捉えることができます。