各国では音楽チャートにYouTubeの再生数をいかに組み込むか、長い間議論されてきました。すでに一部の国ではYouTube再生数をカウントする換算方式が使われていますが、まだ実現していない国のチャートも多くあります。

なぜチャートに採用できないのか? それは「バリューギャップ問題」だけが原因ではありません。YouTube再生数を音楽サブスクリプションでの再生と無料サービスの再生とどのように重み付けするかについて慎重な議論が続いています。

こうした現状の打開策として、IFPI(国際レコード産業連盟)は、YouTube再生数の換算を標準化し、世界各国の音楽チャートにYouTubeの数値を追加するプロセスを迅速化する目的の「音楽チャート・フレームワーク」を開発しました。

このフレームワークでは、YouTubeにログインしたユーザーの再生数と、公式ミュージックビデオの再生数をカウントすることを前提としています。

つまり、UGCコンテンツの再生数はカウントされません。また動画は30秒以上再生される必要があり、「プラットフォーム上の広告キャンペーンによって生成された公式コンテンツの再生」は含まれないものとしています。IFPIはこのフレームワーク開発にあたり「これらの基準を満たせば、YouTubeのサブスクリプションと広告配信の双方からの再生数がチャート換算の対象になります」と説明します。

この換算方式を取り込む流れもすでに始まっています。今月からオーストラリア、スペイン、ドイツ、ブラジル、メキシコ、インドネシア、フィリピン、南アフリカの音楽チャートで展開が始まる予定です。

音楽業界において、YouTubeの重要性は、音楽消費のプラットフォームとして必要不可欠であることは疑いの余地もありません。その影響力を考えると、YouTubeの再生を考慮しない音楽チャートは、消費される音楽コンテンツの市場情報や傾向を示すベンチマークとは言い切れません。そのため、IPFIの提唱する取り組みは、世界中の音楽業界にとって、プラスに働くはずでしょう。

IFPIでグローバルチャート担当責任者のルイス・モリソンは、「YouTubeの音楽消費を各国の音楽チャートに組み込むためのグローバルな枠組みは、アーティストにとって有益になります。同プラットフォームでの楽曲再生がさらに有意義な形で認識されることに繋がるからです。また、音楽ファンにとっても、各国での音楽とのエンゲージメントをより深く反映したチャートを見ることができるようになります。これらの取り組みによって、音楽市場で何が起きているか、理解も深まります。これは音楽業界が前進するために重要な一歩です。世界中のチャートの関連性を維持し、音楽と繋がるファンの行動を正確に反映させるIFPIの活動においても重要なステップとなります。そして、優れた動画コンテンツに投資するアーティストやレーベルにとっても有益な結果をもたらすはずです」と述べています。

動画プラットフォームは、このIFPIの枠組みをどう捉えているか、気になるところです。昨年7月、TikTokの音楽部門グローバルヘッドのオーレ・オーバーマンは「クリエイションとエンゲージメント」がチャートの指標になるべきと、語っています。公式チャートに動画の再生数を反映させることが、現代の正しい音楽消費の指標であるというスタンスをIFPIはこの枠組みで示していると言えます。