音楽業界では、アーティストとNFTを絡めたプロジェクトが数多く進むようになりましたが、同時に、NFTを不正利用して利益を得ようとする詐欺行為も横行し始めました。NFTの活用に警鐘を鳴らす業界関係者では、RIAA(全米レコード協会)会長のミッチ・グレイザーもその一人です。グレイザーは、昨今、音楽や音楽IPを許可なく使用するNFTスタートアップに対して警告しています。「消費者は、著作権、商標、名前、イメージ、肖像権など基本的な法的基準と、公平な競争に従わなければならない」とVarietyの寄稿記事で述べました。

グレイザーが危惧するのは、「人気アーティストや人気曲をNFT化して一般消費者に提供するプロジェクトが、アーティストや権利者の認識、関与、許可を得ず、多発している」問題です。「これらを行うサービスは利益を得ていますが、それがいつの間にか消えています。その利益がどこに行くのかは分かりませんが、NFTに紐付けられたアーティストやソングライターには届いていません」

楽曲IPの不正利用や、不正に利益を得るNFTプロジェクトでは、NFTスタートアップ「HitPiece」が数多くの批判を受けました。HitPieceはアーティストの名前や楽曲を権利者の許可を得ずNFT化して、自社のマーケットプレイスで販売し、利益を得ているスタートアップとして悪名をはせました。RIAAはHitPieceを「詐欺企業」と称して著作権侵害を止めなければ訴訟を起こすと警告していました。

グレイザーと同じ警告は、先日IFPIが発表したグローバル・レポートの発表会で、ソニーミュージックでグローバルデジタルビジネスを担当する社長 デニス・クーカーも、不正なNFTやWeb3.0の取り組みに懸念を示していました。「(NFTなど)新興分野で見かける行動の幾つかは、ナップスター時代を思い起こさせるものがあります。すでに海賊行為や消費者詐欺を想像させる事例がマスレベルで多発しています。音楽業界にとって懸念すべき事案です」