欧州委員会(EC)は、ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)傘下のVirgin Music Group (VMG)によるDowntown Music Holdings買収を、条件付きで承認した。ECは、UMGとDowntown Musicの事業内容が「市場の健全な競争を著しく阻害する」と判断した。発表自体は、事前に情報が多くリークされていたため、大きなサプライズを呼ばなかった。
承認条件は、Downtown Musicが運営するロイヤリティ分配システム「Curve Royalty Systems」を、買収から完全に切り離して売却することとなった。Curveを独立事業として自立させるか、上記を含めて第三者へ売却することが求められている。完全売却の内容には、次が含まれる。
・Curve全従業員
・顧客および顧客データ
・契約
・プラットフォームのソースコード
・データおよびアルゴリズム
UMGは、買収は「今後数週間」のうちに完了する見込みであるとコメントした。併せて、Curveは「売却が完了するまで別事業として保有する」と説明する。
2007年設立のDowntown Musicは、世界145カ国で5,000社以上の企業と、400万組以上のアーティストや作詞作曲家を支援してきたグローバル規模のインディペンデント音楽企業の最大手。今回、買収対象となったサービスには
・FUGA、CD Baby、Soundrop (音楽ディストリビューター)
・Songtrust (音楽著作権アドミン・サービス)
・Downtown Artist & Label Services (アーティスト・レーベルサービス)
・Downtown Music Publishing、Downtown Neighbouring Rights (著作権事業)
などが含まれる。
ECは、UMGおよびVirgin Music Group買収提案を承認した理由として、音楽ディストリビューション市場には「有力な競合相手が複数存在する」ことを挙げている。競合には、他の2大メジャー (ソニー・ミュージック、ワーナーミュージック)に加えて、Believe、DistroKid、IDOL、Kontor、OneRPMなど、インディペンデント企業が多く参入しており、これらの企業への契約変更 (乗り換え)は既に起きているが、乗り換えコストや、時間の負担は大きくないと説明する。
またECは、UMGとDowntown Musicの事業内容、特に原盤事業とアーティスト・レーベル・サービス事業における市場シェアが、いずれも「中規模程度」に留まると結論付けた。さらに、取引内容によって、UMGがDSPとのライセンス交渉で優位に立つような立場が大きく変わることはない、とも判断された。
Virgin Music Group共同CEOのナット・パスター (Nat Pastor)とジェイティー・マイヤーズ (JT Myers)は声明で次のように述べた「Downtownの優れたチームと能力がVirgin Music Groupに加わることで、インディペンデントな起業家、アーティスト、レーベルに向けて、より柔軟かつ洗練されたサービス提供が可能になります。文化的に相性の良く、強みを深く補完し合う2社を統合することで、私たちはより強力でオープンなエコシステムを構築していきます。そして、インディペンデントな起業家が自身の条件で成功するために必要なリソース、投資、テクノロジーを提供しています」
Downtown MusicのCEO、ピーター・ファン・ライン (Pieter van Rijn)は次のように述べた「Virgin Music Groupと協力することで、私たちはより多様かつ柔軟で、より多くの機会を生み出す環境の構築に貢献していきます。これは、独立性を一層強め、私たちがサービス提供する素晴らしいパートナーの文化的影響力を拡大するものです。Downtownの進化を新たな章に進め、ナット、JT、そしてVirgin全体のチームと緊密に連携し、真にグローバルな規模でインディペンデント音楽を支援し続けられることを大変嬉しく思います」
買収に最も強く反対していた、欧州のインディーレーベル団体「IMPALA」は、承認プロセスを評価する前向きな姿勢を示した声明文を出した「今回の規模の精査と、構造的な是正措置を実現できたことは、インディペンデント業界にとっての成果です。今後の買収案件は、厳格かつ長期の審査対象になる、という明確なメッセージになりました」「大企業は業界や市場に新たな利益をもたらし、あらゆるビジネスには適切な出口の選択肢が必要です。しかし、大きいことが行き過ぎれば、限界があることも事実です。今回の取引は、市場において、より多くのインディペンデントの成長機会が生まれる余地があることを示しました」
今後、Virgin Music GroupとDowntown Music の統合が進む中、最大の焦点は、Curveを誰が買収するか、に集まる。買い手先が、Curveを独立事業体として維持し、成長させるために投資を行うかどうかは、インディペンデント業界全体にとって重要な焦点となる。Music Ally Japanでは、いくつかの候補を考えてみた。
・UMGと競合するメジャー2社は現実的に厳しい。
・競合するディストリビューターは、企業毎の現状に左右される。売却の噂があるDistroKidは、難しいと思われる。
・音楽業界向けに権利管理・ロイヤリティ収益管理システムを提供する音楽権利専門のテクノロジー企業は候補として挙げられる(Vistex、Music Reportsなど)
・インディペンデント向けの権利買収・投資・レーベル再建を手掛ける企業にも可能性がある (Exceleration Music、Create Music Group、Pipeline、Duettiなど)
Curveの売却先は、同社の評価額によって大きく変わる可能性がある。売却プロセスが明らかになるにつれて、想定外の企業が買収に名乗りを上げる余地も十分にある。
