ライブ市場が変わるかもしれない裁判が大きな注目を集めている。
ライブ・ネイションは、同社のライブや会場のブッキングおよびチケット販売における独占的支配に関する反トラスト法 (独占禁止法に相当)訴訟で、米国司法省 (DOJ)と和解した。今回の訴訟ではDOJと米国39州がライブ・ネイションを提訴している。訴訟は長期化が見込まれていたが、予想に反して、の噂はニューヨーク連邦裁判所で始まった直後、両社の和解が発表された。なお正式な和解は、裁判官の承認待ちとなっている。
和解の条件は、主に次の内容となった
- 今後ライブ会場がチケットを販売する場合、チケットマスター以外のSeatGeekやEventbrite、StubHubなど複数の企業を通じてチケット一次販売できるようにする。チケットマスターは、自社プラットフォーム上に競合企業のチケット情報を掲載できるように技術を提供する
- ツアー中のアーティストが、ライブ・ネイションの会場でライブ公演を行う際も、ライブ・ネイション以外のプロモーターを起用できるようにする。
- 会場との独占チケット契約は最長4年に制限
- 損害賠償を求めている米国39州に対し、2億8000万ドル (約440億円)の基金を設立。
- ライブ・ネイションが独占的にブッキング契約を結んでいた13のアンフィシアター会場との契約を終了し、他のプロモーターに開放する。
- アンフィシアターのサービス手数料はチケット価格の15%に上限を設定
- 報復行為を禁じる同意命令を8年延長
もし和解が成立すれば、米国政府が目指していた「会社分割」よりも軽い結末となり、ライブ・ネイション子会社のチケット販売最大手、チケットマスターの分割は回避される。DOJは今回の枠組みが「一次チケット販売市場にこれまで存在しなかった競争が生まれ、結果としてチケット価格が下る方向への影響が生まれます」との見解を示した。
ライブ・ネイションは世界460会場を所有または持ち分を保有していることに加えて、チケットマスターの独占的なチケット販売手法、ツアープロモーションとアーティスト・マネジメントの両方を担う事業構造などが、訴訟の争点でもあるライブ市場の独占的地位を強める大きな要因として批判されてきた。DOJは、ライブ・ネイションがサービスの「抱き合わせ」でライブ公演したいアーティストや会場に圧力をかけ契約を迫り、競合他社を排除し、ファンに過大な手数料を負担させてきたと指摘していた。
当然ながら、和解に不満を示す声も出ている。ニューヨーク州は和解に合意しない立場を示し、「この和解は本訴訟の争点の中心である独占を解決できません。ライブ・ネイションは消費者を犠牲にして利益を得ています。私たちは同意できません」と同州司法長官レティシア・ジェームズ (Letitia James)は訴訟の継続を表明した。ニューヨークに加えて訴訟を続けるのはアリゾナ、カリフォルニア、コロラド、コネチカット、イリノイ、カンザス、メリーランド、マサチューセッツ、ミシガン、ミネソタ、ネバダ、ニューハンプシャー、ニュージャージー、ニューメキシコ、ノースカロライナ、オハイオ、ペンシルベニア、ロードアイランド、テネシー、ユタ、バーモント、バージニア、ワシントン、ウィスコンシン、ワイオミング、およびコロンビア特別区となる。これらの州では、裁判のやり直し、手続きの限定的な停止を求める申し立てを行った。
また独立系ライブ会場の業界団体「NIVA」(National Independent Venue Association)は、2億8000万ドルの和解基金は、「(同額は)ライブ・ネイションの2025年売上のわずか4日分に相当し、金曜日までに取り返せる可能性がある」と指摘し、今回の和解条件を「司法制度の失敗」と厳しく批判している。
