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2025年の世界音楽市場の成長度合いをまとめた毎年恒例の年次レポートを調査会社MIDiA Researchが発表した。今週予定されているIFPI (国際レコード産業連盟)の2025年版「グローバル・ミュージック・レポート」(GMR)の発表に先立ち、MIDiAから一足先にデータが公開された。レポートによれば、2025年の原盤音楽市場は395億ドル (約6兆2778億円)となり、成長率は前年比9.4%増加した。緩やかな成長に留まった2024年に比べ、2025年の世界市場は再び収益化が上向いた。

https://musicindustryblog.wordpress.com/2026/03/16/global-recorded-music-revenues-up-9-4-in-2025/

MIDiAが毎年発表してきた世界原盤市場の年間売上高と成長率を並べてみると、以下の通りになる。

2021年:288億ドル (24.7%増)
2022年:312億ドル (6.7%増)
2023年:351億ドル (9.8%増)
2024年:362億ドル (6.5%増)
2025年:395億ドル (9.4%増)


2025年、大きな成長を遂げた収益カテゴリーは「拡大権利」(エクスパンデット・ライツ、Expanded Rights)ビジネスで、21.5%という驚異的な成長を記録した。ここには、レコード会社の収益分であるアーティストグッズ販売、EC・D2C、ライブ、ブランド協賛などからの分配が含まれ、2025年の売上高は2倍以上拡大した。MIDiAは近年、原盤収益に拡大権利収益を加えて計算している。理由は、拡大権利を運用し、新規収益を生み出すレコード会社が増え始めたからだ。もう一つ、2025年に好調だった収益カテゴリーは「フィジカル」 (アナログ・レコード、CD)だった。とりわけ、拡大権利の成長とフィジカル収益は、現代のレコード会社が推し進める「ファンダム戦略」の普及と、ファンエコノミーの役割 (と収益化)の拡大という世界的なトレンドを示している。

世界の音楽市場の主な収益源は、依然としてストリーミング収益(売上高ベース)であることに変わらず、2025年の上昇傾向もストリーミングの好調が貢献した。一方、成長率ベースで見ると、2025年はフィジカル、ライセンス収益、拡大権利が急速に成長した。全体の成長率が2024年を3%近く上回ったことは、世界の音楽市場にまだ十分な成長機会が残っていることを示している。

MIDiAのマネージング・ディレクター、マーク・マリガン (Mark Mulligan)は次のように分析している「2025年は、ファンエコノミー台頭の歴史的な節目の年でした。ストリーミング時代に入って初めて、ストリーミング売上の成長率が市場全体の成長率を下回りましたが、背景には、拡大権利とフィジカルの大幅な伸びがありました。拡大権利の貢献度は非常に大きく、(拡大権利を抜いた)従来の原盤収益の定義で計算すると、市場の総売上成長率はわずか7.7%に留まるほどです」

2025年、MIDiAでは次のようなグローバル・トレンドを発見した。

  • 地域別では、ラテンアメリカ地域が世界的に最も急激な成長を記録
  • 非メジャーレーベル (インディー等)は市場シェアが拡大したものの、拡大権利を除外した場合シェアが減少
  • アーティスト・ダイレクト (DIY配信アーティスト)は、再生数が顕著に伸びたものの、市場シェアは減少。理由はDSPが新たな収益分配の基準値を適用したため


非メジャーレーベルが拡大権利無しでシェアが下がる主な理由は、HYBEなどのK-POP企業の影響が大きく、ファンダム戦略と拡大権利で世界的に成功していると推測される。DistroKidやCD Baby、TuneCore、Amuseなどを使うDIYアーティスト (アーティスト・ダイレクト)領域での収益構造は、ストリーミングプラットフォーム各社が設定する基準に影響を受けやすいことも見えてきた。

MIDiAは、ストリーミング市場からの収益化は複雑化が進んでいると分析する。収益分配モデルも従来のプロ・ラタ・モデルだけでなく、アーティスト中心モデルが広がりつつある。

ストリーミング市場の複雑化に繋がるその他の要因では、次のトレンドが挙げられた。

  • サブスクリプション価格の値上げ
  • ディスカバリーモードの普及
  • オーディオブック・バンドルに伴う分配ルールの変更
  • メジャーレーベルによるインディー原盤のディストリビューション


レコード会社や音楽業界が成長を維持するには、これらのトレンドを加味した上で、ストリーミング以外の収益源を新規獲得する工夫が求められる。そして、熱量の高いコアファンやファンダムから多様な収益を得る拡大権利ビジネスの成長は、依然のような再生数を稼ぐストリーミング収益依存から、収益源の多様化・分散化へ、業界トレンドが向かっていることを示している。