ソニーミュージックの音楽出版会社で、世界最大のシェア(音楽出版市場)を持つソニーミュージック・パブリッシングは、世界最大規模の音楽IP・著作権管理会社「Recognition Music Group」が保有する全ての楽曲カタログの権利を取得することで合意した。対象は45,000曲以上の楽曲が含まれ、世界的なヒット曲や、過去のカタログヒット曲が多く含まれる。代表曲にはJourney「Don’t Stop Believin’」、Red Hot Chili Peppers「Under the Bridge」、Fleetwood Mac「Go Your Own Way」、Beyoncé「Single Ladies」、Leonard Cohen「Hallelujah」、Rihanna「Umbrella」などとなっている。買収金額は非公表だが、関係者情報によれば、約40億ドルと報じられている。日本円に換算すると約6,300億円と推測される。
ロンドンに拠点を置くRecognition Music Groupは、かつてのHignosis Songs Assetsと、Hipgnosis Song Fundが買収した著作権、原盤権を統合し管理を引き継いだ会社で、2025年3月に現在のRecognitionへ企業名を変えた。既にソニーミュージック・パブリッシングは2025年5月にHipgnosis Songs Groupを買収し、同社が保有する約4,400曲分の著作権を取得した。対象にはサブリナ・カーペンター、St. Vincent、カリ・ウチス、My Morning Jacketなどの楽曲が含まれる。
今回の買収では、ソニーミュージック・パブリッシングは、ソニーミュージック・グループ、シンガポールの政府系ファンド「GIC」、ソニー銀行が参加した。ソニーミュージックは2026年1月に、カタログ楽曲の著作権買収を強化するため、GICと合弁会社を立ち上げ、資金を確保した。
ソニー・ミュージック、音楽カタログ権利取得を強化。シンガポール政府系ファンドGICと合弁会社設立へ
再注目される音楽出版ビジネス
今回の取引で注目したいのは、ソニーミュージックは取引の目的を「過去のヒット曲のリバイバル」ではなく、「将来の利益を生むIPインフラ」の一部として捉えていると考えられる点だ。特にGIC、ソニー銀行といった金融企業と組んでいる点には注目したい。これは、音楽IPを資産として長期運用し、収益化するビジネスモデルを強化しようとする同社の戦略と見られる。
もう一つ、注目したい点は、音楽出版ビジネスと専門企業の価値が再評価されているという点だ。著作権を保有する企業や権利者は、ストリーミングとサブスクリプションで世界各地から安定した収益を予測し、長期的に得られるようになったことに加え、過去のカタログ楽曲やヒット曲、眠っていた名曲の再活性化で、新たな収益獲得の機会が増えている。新たな収益源とは、NetflixやAmazonプライムなどの動画配信各社の映画・ドラマ・リアリティ番組・ドキュメンタリーでの楽曲利用、広告、SNS、ゲーム、スポーツなどがある。
そして今、メジャーレコード会社も音楽出版社も、新たな収益源を求めて、著作権の獲得競争を強化している。競合するのは、メジャーだけではなく、長期のリターンを求める投資家や、投資ファンドと組む新進気鋭の音楽企業や音楽IP専門の投資会社となっていく。Primary WaveやReservoir Media、Round Hill Musicなどの音楽IP運用会社は、積極的な投資を行い、収益の機会拡大を狙っている。
2026年は、音楽業界で大型の企業買収と統合が続いており、今回のソニーミュージック・パブリッシングのRecognition Music Group買収は、その流れをさらに強めることとなる。これまでに、BGMとConcordの企業統合、Primary WaveのKobalt買収、Virgin Music Group (VMG)のDowntown Music 買収と取引が続いている。2026年は単に企業買収に留まらず、「メジャーレコード会社」「大手インディペンデント」「音楽IP」「金融業界」が組んだ業界再編の始まりを示唆している。
