ユニバーサル ミュージック グループ (UMG)と、Spotifyは、2社間における「戦略的関係の拡大」で合意したことを発表しました。
今回合意の条件において、Spotifyは、UMGアーティストやソングライターに対して、音楽発見とソーシャル・インタラクションの機能を拡大し、プラットフォーム全体でのファン体験を強化します。
また、合意の一環として、UMGアーティストは、Spotifyが提供する新たなプロモーション機能やソーシャル機能を利用出来るようになります。
将来的に、UMGアーティストは、ファンに向けて、新曲をリリース前にティザーコンテンツとして共有したり、プリ・セーブの体験を提供できるようになる予定です。新作をリリースする際、ファンエンゲージメントを高めるための、プロモーション活動を活発化できます。
加えて、ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング・グループ(UMPG)とSpotifyとで、新しい契約も交わされました。
今回の合意に基づいて、Spotifyは、米国ユーザーに向けて、UMGアーティストのMVがSpotifyアプリ上で配信可能になります。
動画を起点に、楽曲、アーティスト、ソングライターとファンとより深いインタラクションを実現させます。Spotifyは最近、MVの配信をベータテストで11カ国で始めましたが、米国は含まれていませんでした。
ユニバーサル ミュージックは「両社は、引き続き、ファンがアーティストを発見し、新譜のバイラリティを促進するための追加機能を探求していきます。両社は、これらの新しいツールの詳細と、アーティスト、ソングライター、ファンがどのように活用できるかについて、近い将来発表する予定です」とプレスリリースで説明します
同社のCEOであるルシアン・グレンジは、今回の合意について「Spotifyプラットフォームで、一層深い”ソーシャル音楽体験”を実現する新たなコンテンツの提供やコラボレーションの導入を通じて、Spotifyとの関係を拡大できることを嬉しく思います」と述べます。
「Spotifyは、アーティストやソングライターのアトリビューションと、公平な収益分配を最大化するツールの開発における、献身的なパートナーであり、この音楽会社とプラットフォーム間のウィン-ウィンなパートナーシップは、イノベーション、アーティストへの収益分配、次世代のファン体験を共存させ、業界を前進させるための環境の創出を具体化しています」
次世代のファン体験の開発とは
Spotifyとの新たな契約の発表は、音楽業界にとっても、高い関心を集めます。特に、TikTokとのライセンス交渉決裂で、同アプリからアーティストやソングライターの楽曲配信を停止しているUMG及びUMPGが、このタイミングで、他社DSPと合同発表を行うことは、TikTokに対するさらなる牽制ともプレッシャーとも捉えることも出来ます。
今回の発表について、Music Ally Japanで考察をする中、いくつかの点が浮上してきました。
まず、1つ目には、今回UMGがSpotifyから提供される「プロモーション機能」や「ソーシャル機能」が、UMG以外のレーベルや、インディペンデント業界でもアクセスできるか、否かです。
この疑問をSpotifyに投げかけてみた所、同社の広報担当者は、Music Allyに対して「これらのツールは、まだローンチしていません。他のツールと同様、初期の利用から知見を集め、徐々にアクセスを拡大していきたいと考えています。時間をかけてアクセスを拡大していきたいと思います」と答えました。
2つ目は、グレンジが述べた「次世代のファン体験」が何を指すか、です。
グレンジは、1月、UMG社員に向けた年頭メモの中で、ファン体験の創出がレーベルにとって重要戦略であることを述べました。
「私たちの戦略の次の焦点は、スーパーファン向けの体験と商品を通じて、アーティストとファンの関係を強化することで、あらゆるアーティストのシェアを拡大することです。この取り組みでは、既にプラットフォーム・パートナーと話し合いを進めています。今後数カ月のうちに詳細を発表する予定です」
さらに、1月にロンドンでMusic Allyが開催したグローバル・カンファレンス「Music Ally Connect」に登壇した、UMGのチーフ・デジタル・オフィサーのマイケル・ナッシュは、基調講演で、ファン体験に何が含まれるかを、次のように述べました。
「早期アクセス、プレミアム・コンテンツ、デジタル・グッズ、ファンバッジ、ファン体験のゲーミフィケーションまで、これらのフォーマット全てが対象です。アーティストと繋がるためのアクセス。いくつかのプラットフォームは、デジタル・サブスクリプションと連動するフィジカル商品の提供が可能です。UMGでは、アーティストやプラットフォーム・パートナーと協力しながら、適切な商品構成を開発すれば、サブスクリプション利用者の20%の『スーパー・プレミアム』ファン層を狙うことができると確信しています」と述べました。
今回、UMGとSpotifyの契約では、音楽発見とプロモーション・ツール、ソーシャル機能に焦点を絞った内容に、大部分が触れられましたが、Spotifyも、ファンエンゲージメント創出とスーパーファン体験の提供に注目していることは、昨今のツールのテストからも示唆されてきました。