テイラー・スウィフトは、2019年に自身の原盤権が買収されたことで、過去作品を再録音した「テイラーズ・ヴァージョン」シリーズの配信を始めました。彼女の再録作品は次々とストリーミングチャートとっで大成功を収めたにも関わらず、他のアーティストが、彼女と同様の戦略を本格的に行う事例は、これまで多くありませんでした。

しかし、アメリカ・ロサンゼルスのヘヴィメタル・バンド、Five Finger Death Punchは、活動20周年を記念したベスト盤『Best Of – Volume 1』のために、過去のヒット曲や代表曲を再録音して配信する、意欲的な取り組みを行いました。バンドの再録は、旧レーベルのProspect Parkが彼らに通達もなしに、原盤権を密かに売却していたことへの処置です。バンドは、原盤権の50%を保有していましたが、管理権 (アドミニストレーティブ・ライツ)を持っていなかったため、作品を取り戻す機会も与えないまま、売却を知らされませんでした。バンドと旧レーベルの関係は、これまで法的対立状態にあり、改善が見られませんでした。今回再録された楽曲は、ストリーミングサービス上でオリジナル版と並んで配信され、リスナーがどちらを支持するか、競うことになります。

一般的に、音楽業界では周年記念の作品では、リマスター版やリミックス、未発表曲を追加することが多いですが、彼らは完全に再録音する勇気ある選択肢を選びました。これは、今まで常にバンドを支えてきてくれたファンへの感謝を示す証でもあります。

バンドは、長年ファンの間で人気の楽曲で、再録されたシングル「I Refuse」で、米国ビルボードのメインストリーム・ロックチャートで1位を獲得しました。彼らは、配信以外でも再録アルバムを様々な方法でマーケティングしています。通常版CDの他、コレクターズ向けアナログレコードや限定版CDを制作し、バンド公式ECサイトや、インディーズレコードショップで展開しています。バンドは年内に『Best Of – Volume 2』の配信も予定しています。