Spotifyがアップルに対して市場の独占的行為に関する苦情を申し立てたことを受け、欧州委員会が調査を開始するか検討している最中、アップルから公式な回答が発表された。

アップルの回答に関して、様々なメディアがそれぞれの見方を展開している。ミュージック・ビジネス・ワールドワイドは、「SpotifyのCEOであるダニエル・エク氏は説明すべきことがあるかもしれない」と報道しているのに対し、The Vergeでは、「アップルは無関係なSpotifyのサブスクリプション統計数を持ち出している」と報じている。

この統計というのは、Spotifyの1億人の会員登録者のうち、およそ68万人がiOSのアプリ内課金を通じて月額料金を支払っており、該当する会員登録者はすべて1年以上に渡って月額を支払い続けており、よって、アップル社はこれらの支払いの15%しか手数料として受け取っていないというもの。これはSpotifyはアップル社が提供するアプリ内課金機能を2014年から2016年までの間のみ使用しており、その後に登録したユーザーはSpotifyに直接課金する仕組みになっているためだ。

この統計自体が、Spotifyのビジネスに関するデータに、アップル社がプラットフォーム所有者としてアクセス権を持っているということを示している。

ミュージック・ビジネス・ワールドワイドの報道は、Spotifyの全会員登録者のうち、0.5%のみがアップル社を通じた課金を行なっているとすれば、「App Store税」によってビジネスが打撃を受けているとするSpotifyの主張はでっちあげだという主張のもとに成り立っている。

対して、The Vergeの報道では、Spotifyは3年前にアプリ内課金を廃止しており、そうせざるを得なかったとするSpotifyの主張に対しては反証されていないため、これらの統計は無関係であると捉えられている。この論争を取り巻くメディアの記事を幅広く見てみると、Spotifyもアップルもお互いに決定打はつかめていないようだ。

プラットフォームへのアクセスに関する問題は複雑さに溢れており、規制が必要な分野であることは間違いない。欧州委員会がアップル社への調査開始を拒否すれば、Spotifyへの打撃となることは確かだ。しかし、もし調査が開始されたとしても、それは必ずしもアップル社の負けを意味するわけではなく、むしろ、判決が下される前に両サイドによる議論がさらに詳細に調査されることに繋がるだろう。