Spotifyは、「ディスカバリーモード」(Discovery Mode)機能の提供を巡って、集団訴訟に直面している

この訴訟はニューヨークで提起され、訴状によれば、Spotifyのディスカバリーモード、公式プレイリスト、レコメンデーション機能は、レーベル側がユーザーに知らせること無く有料でプロモーションする「現代版ペイオラ」(Payola、楽曲再生や露出に対して支払を行う行為)であり、消費者の信頼を裏切る行為であると主張する。日本的な文脈で解釈するならいわゆるステルスマーケティング (ステマ行為)に該当し得る楽曲プロモーションの可能性を指摘している、と捉えることができる。

https://artists.spotify.com/ja/discovery-mode

また、公式プレイリストやレコメンデーションは、一般開示されていない「ペイ・フォー・プレイ」 (支払に応じて保証された再生回数)や商業的インセンティブに基づいて選曲されているにも関わらず、Spotifyはこれらは中立的な選曲、またはユーザー個々の音楽嗜好に基づく選曲であるとする虚偽の説明を行っていると訴える。原告のジュヌヴィエーヴ・カポロンゴ(Genevieve Capolongo)は、Spotifyの誤解を招く機能に影響を受けた数百万の利用者を代表してSpotifyを訴えている。彼女は、長年Spotifyのパーソナライズ機能を利用してきたが、自分の音楽嗜好に相反するメジャーレーベルの楽曲ばかりが繰り返し流れてくると主張する。

問題が指摘されるディスカバリーモードは、日本のレコード会社やディストリビューターには一般展開されていない機能だが、2020年に発表されて以来、メジャーレーベルや海外市場を対象に段階的な導入と機能アップデートが行われてきた。この機能は、レーベルやアーティストが自らの楽曲を優先的にレコメンドしてもらう可能性を上げるため、ロイヤリティ収益の30%を減額するという仕組みだ。現在では、条件を満たした多くのアーティストやレーベルが、同機能を使って新曲やアルバムのプロモーション、新規リスナー開拓、海外展開などのマーケティング戦略に活用している。しかし、ディスカバリーモードは、当初から、前述の「ペイオラ」に類似しており、広告要素を持つレコメンデーションをユーザーに明示する情報開示や透明性に欠けていると厳しく批判されてきた。

今回の訴訟に対しSpotifyは即座に反論の声明を発表した。Spotifyの広報担当者はMusic Allyに対して次のようにコメントした「この訴状の主張は完全にナンセンスです。ディスカバリーモードの仕組みや目的を誤った説明をしており、誤解や不正確な記述が満載です。ディスカバリーモードは、アーティストが自身の楽曲をラジオ機能やオートプレイ、特定のミックスなど限定されたコンテクストの中で、アルゴリズムの審査対象となる優先トラックとしてフラグできる機能です。再生数を購入するものではなく、公式プレイリストの選曲にも影響しません。またこの仕組みの説明はアプリとウェブサイト上で明確に開示されています」

今回の訴訟と、ディスカバリーモードへの注目は、Spotifyが近年推し進めているアルゴリズムによる音楽の発見機能の強化に対する透明性と倫理性の議論を再活性化させるものとなる。アルゴリズムを活用したレコメンデーションの信頼性や、レコード会社やアーティストの広告的要素を含むプロモーションの消費者への情報開示を要求する声も、今後広がる可能性もある。
 

Spotifyのディスカバリーモードを解説 (ポッドキャスト番組「Music Ally Japan Focus #1」