Spotifyは、昨年三月にアップルに対して欧州委員会による独占禁止法に関する申し立てを発表した時、問題に関して詳細に綴った独自の特設サイトを設立するなど、十分に準備を整えて行動を起こしていたように見えた。今度は、ゲーム「フォートナイト」開発元であるEpic Gamesが、数段階レベルを引き上げて同じことを行っている。

 Epic Gamesは、アップルによる「一連の反競争的制限および独占的慣行」に対して訴訟を起こし、小説『1984年』を元にして制作されたアップルのMacintosh紹介時のテレビ広告のパロディとして、「Nineteen Eighty-Fortnite」という映像をFortnite内のプレーヤーおよびオンラインにて公開している。

 Epic Gamesは、今回の論争を引き起こすために準備をしており、事実、訴訟を起こすために、アップルを挑発し、アップルがApp Storeで「フォートナイト」を禁止するよう、計算的な動きを取っていた。Epic Gamesは、グーグルのアプリ・ストアであるGoogle Playのポリシーに対しても訴えている。今回の件は全て、Spotifyとアップルとの進行中の争い、そして、昨年3月の申し立てが元となった正式な欧州委委員会による調査に大きく関わっている。

 Epic Gamesは今月13日に、ゲーム内通貨であるV-Bucksと現金でのオファーの購入ごとに最大20%割引が適用される、「メガプライスダウン」、そして、iOSとAndroidでの新しい支払い方法、Epic ディレクトペイメントを発表した。Epic Gamesのウェブサイトは、Epic ディレクトペイメントの使用を選択すると、Epicが支払い処理の値下げ分をお客様に還元するため、最大20%の割引となるが、現在アップルとグーグルの支払いオプションを使用すると、アップルとグーグルにより、30%の手数料が徴収されるため、最大20%のプライスダウンは適用されないと説明している。

 Epic Gamesは、アップルおよびグーグルの支払いシステム(30%の手数料を含む)に対する、今回の公な場での挑戦が何を意味するかを正確に理解していた。アップルとグーグルは、それぞれのアプリ・ストアから「フォートナイト」を正式に削除している。iOSおよびAndroid端末では、ゲームは引き続きプレイはできるが、プレイヤーはゲームを最新版にアップデートすることはできない。「Fortniteのチャプター2シーズン4がリリースされても、新しいシーズンはプレイできません」とEpic Gamesは説明している。

 アップルグーグルの両社ともに、声明を発表している。「Epic Gamesは、アップルによってレビューおよび承認されていない機能をアプリ内で有効にし、デジタル商品やサービスを販売する全てのデベロッパーに適用される、アプリ内課金に関するApp Storeのガイドラインに、明確な意図をもって違反しました」とアップルはコメントしている。

 「Google Play ストアを利用することを選択した全てのゲーム・デベロッパーには、ユーザーにとってストアを安全に保つためのポリシーが公平に適用されます。『フォートナイト』はAndroid端末で引き続き利用できますが、当社のポリシーに違反しているため、Google Play ストアでは利用することができません」とグーグルは発表している。

 驚くべきことではないが、Spotifyは今回のニュースを歓迎している。「アップルに対抗し、アップルの支配的地位の濫用をさらなる白日の下に晒すというEpic Gamesの決心を我々は称賛します。アップルの不公正な慣行は、競合に不利益をもたらし、消費者を長い間食い物にしてきました」とMusic Allyに対して送られた声明でSpotifyの担当者は述べた。「消費者およびアプリ・デベロッパーの規模にかかわらず、iOSプラットフォームが、競争的かつ、公正に動作することを保証するのは、広範な意味を伴う喫緊の課題です。」

 Epic Gamesは特にアップルを激しく追求しており、問題が解決するまでにはしばらく時間がかかりそうだ。Epic Gamesは、V-Bucksの購入売上を全て維持したいというだけではなく、App Store自体を変えたいと考えている。

 「アップルの違法な制限に対して、Epicは、iOS端末上に、競合するアプリ・ストアを提供します。これにより、iOSユーザーは、革新的なキュレーションされたストアでアプリをダウンロードできるようになり、ユーザーは、Epicや他のサードパーティのアプリ内決済処理ツールを使用する選択肢が与えられます」とEpic Gamesは説明している。

 ゲーム業界の最近の歴史、特に、2014年に始まった「ゲーマーゲート」論争を知っているのであれば、Epic Gamesによる論調は嫌な後味を残すものだろう。アップルによる特定の広告のパロディではあるものの、大勢の若いゲーマー・オーディエンスをターゲットにして「闘いに参加してください」と呼びかけることは、良く言っても無神経、悪く言えば、過激化を試みた皮肉な作品と捉えられるだろう。

 とはいえ、音楽業界では、既に二大サブスクリプション音楽サービスが激しい反トラスト法の戦いに巻き込まれており、フォートナイトによる訴訟は非常に重要だ。アプリ・ストア(および一般的なテクノロジー・プラットフォーム)がどのように機能すべきか、そして、それがこれらのプラットフォーム所有者によって 運営される音楽サービスおよび、競合他社にとって、何を意味するのかに関する、大きな議論の幕開けだと言えるだろう。