Spotifyとユニバーサル ミュージック グループは、新たな複数年ライセンス契約を締結しました。今回の契約で、両社は「新たな有料サブスクリプションの形態、音楽と非音楽コンテンツのバンドル提供、より充実したオーディオ及びビジュアルコンテンツのカタログの提供」などの領域を開拓し、さらなるオーディエンス・エンゲージメントの促進、アーティストやソングライターとファンとのつながりの強化、継続的なプレミアム会員の増加と定着を実現するために協力します。

契約には、違法再生の防止や不正行為の検出、権利侵害の監視の強化が含まれており、これによってUMGの楽曲をボット再生や人的ストリーミング操作から防ぎ、権利保護や収益化確保を支援します。

今回の契約条件で特に注目されるポイントは、原盤ビジネスの契約に加えて、Spotifyとユニバーサル ミュージック パブリッシング グループ (UMPG)が直接ライセンス契約で合意した点です。新契約では、米国を含む複数の市場でSpotifyとUMPGが直接契約し、契約条件にはSpotifyの既存の製品ポートフォリオ全体が含まれます。2018年にアメリカで「音楽近代法」(Music Modernization Act、MMA)が成立して以降、Spotifyとメジャー音楽出版社の間で合意した初めての直接ライセンス契約です。

音楽出版社とDSP、そして音楽著作権ビジネスにおいて直接ライセンス契約が注目される理由には、Spotifyが昨年導入したプレミアム・プランにオーディオブック視聴を追加する変更と、「バンドル・プラン」におけるロイヤリティ支払いの減額に関連しています。従来の音楽のみのサブスクリプションと異なり、オーディオブックを含むサブスクリプションは、収益が音楽と書籍の出版社で分配される仕組みに変更されます。そのため、音楽出版社と作詞作曲家、著作権保有者が受け取る収益が減額されていきます。

SpotifyとUMPGの直接ライセンス契約は、このロイヤリティ分配の仕組みが改善される可能性を含んでいます。

Spotifyのバンドル・プランのロイヤリティ支払いに強く反対してきた米国音楽出版社協会(NMPA)は、今回のUMGとの契約更新に関して、即座に声明を発表しました。

NMPA会長兼CEOのデビッド・イスラエライト (David Israelite)は「今回のUMGとの契約は、Spotifyがバンドル制度に対する音楽業界の反発を考慮した明確な証拠です。契約の詳細は公表されていませんが、ロイヤリティ率の増加が含まれる可能性が高く、音楽業界全体にとって良い知らせです」と述べました。また「Spotifyはバンドル制度及びロイヤリティ支払いの改変に失敗したことで、再び交渉することを選びました」とSpotifyが音楽業界に再び歩み寄ってきたことを歓迎しました。

最大の焦点は、今回のUMGとUMPGの直接ライセンス契約の条件が、他のメジャーレコード会社と音楽出版社、そしてインディペンデントな音楽出版社にも適用されるかという点です。特に、インディペンデントな企業がSpotifyとどのような条件で交渉し、どのようなロイヤリティ料で合意できるか、注目されます。

今回更新されたSpotifyとUMGの合意は、今後考慮されるべきライセンス契約が、従来のような単なる楽曲再生の条件に留まらないことを示唆します。ストリーミング・サービス各社から分配される収益が多様化へと進む中、音楽業界においてロイヤリティの在り方や料率の在り方が再定義される可能性を意味する重要な転換点となるかもしれません。