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音楽生成AIツールの「Udio」が、音楽業界では3件目となる重要なライセンス契約を締結した。今回の合意は、インディーズレーベルやディストリビューター向けのデジタル・ライツ・エージェンシーのMerlinとのもので、2025年にUdioが結んだユニバーサル ミュージックとワーナー・ミュージックとの契約に続くものとなった。

新契約では、「Merlinに加盟するインディペンデント会員の楽曲レパートリーを、AIモデルの学習に向けてライセンスする枠組みを構築する」ことが要項に含まれる。また「アーティストの権利を保護するための対策」「人間の芸術性の価値を維持」も盛り込まれている。

Merlinとの契約は、Udioがメジャーレコード会社とMerlinを含む「ビッグ4」全てとのライセンス契約の完了に近づいたことを意味する。残るはソニー・ミュージックのみとなった。

Merlinの新CEOに1月より就任したチャーリー・レクストン (Charlie Lexton)は、次のように語った「暫く前から、MerlinとUdioは着地点と公平な報酬の基盤についての対話を重ねてきました。今回の連携は、AIが約束する可能性を模索し、進化に反応するだけの立場に留まらないMerlinのコミットメントを示すものです」

UdioのCEOであるアンドリュー・サンチェス (Andrew Sanchez)は次のように語った「Merlinと連携することで、彼らが自分たちの作品の管理能力を維持し、創造性に対する正当な評価を受け取れるようにしていきます」

サンチェスはMusic Allyに対して、AI音楽市場の今後の発展について、広い見解を語った。

「AI音楽の技術は、今後もより賢く、より直感的に進化し、創作者の意図を深く理解できるようになっていくはずです。これらのシステムは、クリエイターにより多くのコントロールと繊細な表現力を提供し、AIを『ツール』ではなく『創作パートナー』に近いものに進化させるでしょう」

「私が最もワクワクしているのは、この進歩によって、音楽における『可能性』が拡張される点です。人間が作業の中心に今後も居続ける一方、AI技術は彼らの芸術性に積み上がっていきます。これは、実際の楽曲と人間の創造性を出発点として活用することを意味します」

「私たちは、既にアーティストが全く新しい方法でジャンルを融合し、マイクロジャンルを生み出し、従来の境界線を超えて実験する姿を目撃してきました。同時に、AIには新進アーティストを支援するといった現実的な可能性があります。制作やプロモーション、ファンとの間でより意味ある形で繋がる手助けができます。最良の形では、AIは人間の創造性を増幅し、より多くの声を届ける扉を開くでしょう」

AI音楽モデルは、アップデートのたびに強力に進化する一方で、サンチェスは、アーティスト向けの「正当かつ細かなクリエイティブコントロール」は、まだ初期段階だと認めた。

「近い将来、スタイルの表現面でのブレイクスルーを是非見てみたいです。例えば『ポップソングを作って』のような大まかなプロンプトを超えて、より繊細で抽象的なディレクションが可能になり、ファンが創作物をブレンドしたり、好きなアーティストの作品を再解釈する機会が増えることに期待しています」

「より精度の高いスタイルの参照、キー、構成、音楽的意図に関する強力な条件付け、より使いやすい創作の基本要素といった部分に進歩があると、アーティストは頭の中で思い描く通りに音楽が形作れるようになります。そのレベルの制御性こそが、AI音楽が本当に変革をもたらし、アーティストとファンの間で意味ある相互作用の新しい機会を生み出します」

2025年、同じくAI音楽企業の「Suno」は、同社初となる権利者とのライセンス契約を締結し、ブラウザベースのDAW開発の「WavTool」を買収し、自社独自の音楽制作ツール「Suno Studio」をローンチした。

また、音楽AIマスタリングサービスを提供する「Landr」は最近、Reason DAWを運営する「Reason Studios」を買収。将来的にさらなるAI機能を追加する計画を示唆した。

これら一連の動きには、「DAWとAIツールの境界線が曖昧になる」という業界に起きている一つの方向性が見えてくる。

Udioの戦略についてサンチェスは「私たちは、よりプロフェッショナルなツールを求める巨大な市場があることは理解しています。ですが、私たちの主な焦点は、従来型のDAWとの競合ではなく、それ以上に多くの消費者やファン層のニーズに答えることです」と述べた。

「私たちが見ている最大の可能性は、ファンが好きなアーティストや音楽と関わる方法を拡張することです。Ai音楽の次のフェーズは、単に複雑な編集作業ができるようになることではありません。人々が音楽と関わり、好きなアーティストと繋がるために、全く新しい方法を可能にすることです」

Udioのサービスが進化するにつれて、音楽の発見、再生の方法が変化することについても、サンチェスは見解を示した。

「AI音楽プラットフォームは、音楽制作の手段を変えるだけではありません。発見や体験する手段も大きく変えていくはずです。音楽発見は、よりパーソナルでインタラクティブになっていきます。人々は、固定されたジャンルだけに依存するのではなく、気分や状況、創作の好奇心に基づいて、新しいアーティスト、全く新しいスタイルの音楽と出会うようになるでしょう。さらに、ファンとアーティストの繋がりがより深くなっていきます。AIは、より能動的な視聴体験と、ファンがアーティストの創作世界と関わるための方法を実現します。これらのインタラクティブ性は、アーティストの創作ビジョンを中心に維持しながら、受動的だった視聴体験を能動的なファンダムへ変える可能性があります」