ユニバーサル ミュージックとAmazon Musicは、両社の世界規模での提携強化を発表しました。今回、同意した提携で、両社はユニバーサル ミュージックが推し進める「アーティスト中心モデル」に基づく取り組みのさらなる強化、UMGアーティストの独占コンテンツの展開、オーディオ領域とライブ配信での連携、違法な生成AIコンテンツの規制、詐欺行為や不正再生の対策に取り組みます。
ユニバーサル ミュージック グループCEOで会長のルシアン・グレンジは、今回の提携の目的をこう説明しました「私たちは、Amazon Musicとの長年にわたる素晴らしいパートナーシップを、新たなストリーミング時代である『ストリーミング2.0』に向けて前進できることを楽しみにしています。Amazon Musicが私たちのアーティストの利益に深くコミットしていることを高く評価しています。製品の革新とサービスのさらなる成長を通じて、両社で共有された『アーティスト中心モデル』の目標をさらに推進させたいと考えています」
Amazonのオーディオ、Twitch、ゲーム部門副社長のスティーブ・ブームは、次のように述べています「UMGは、Amazon Musicにとって、常に協力的なパートナーであり、私たちは、製品提供や独占コンテンツの展開を通じて、アーティストとファンをつなぐ新しい手法を模索し続けています。その過程でストリーミングサービスの概念を再定義してきました。今回、UMGとの関係を更に拡張できることを嬉しく思います。アーティストが世界中のファンとのエンゲージメントをさらに深めるため、意味のある新たな方法を開拓すると共に、アーティストやソングライター、音楽出版社の作品を保護する取り組みにおいても連携が可能になりました」
ユニバーサル ミュージックとAmazon Musicは、他のDSPと同様に、すでに長年の協力関係が構築されています。そうしたことから、両社の提携強化では、これまでの取り組みの強化や、新たな領域での協業に注目が集まります。
今回の場合、ユニバーサル ミュージックが成長戦略の要として位置付ける「ストリーミング2.0」戦略に、Amazon Musicが賛同したことが進展の一つです。両社は、取り組みの詳細は明らかにしていませんが、今後はAmazonのプラットフォームやサブスクリプション・プランを横断して、UMGアーティストの収益化やファン・エンゲージメントの向上が強化されると考えられます。
また、アーティスト中心モデルに関連する動きでは、Deezerが同様のモデルを採用した収益分配を始めた後、Spotifyは1000回再生未満のコンテンツにロイヤリティ支払いの対象から外す新たな収益モデルを導入し始めました。Amazon Musicが現時点で同様の収益分配モデルを採用することは明らかにされていませんが、収益化の条件に再生数の上限を設定するなど、今後、新たな仕組みの導入に注目が集まります。
さらに、両社は、収益拡大を妨げる人的な不正再生への対策、違法な生成AIコンテンツへの対処でも、連携を強化します。音楽業界において、著作権や様々な権利を無視して生成された音楽AIコンテンツの配信や、非音楽コンテンツの配信は、レコード会社の収益化を阻害し、権利の侵害を助長する存在として、大きく問題視されてきました。アーティストや権利者を守るために、どのような監視強化が行われるか。両社の動き次第で、日本のレコード会社やディストリビューターを含めて、Amazon Musicで配信する仕組みも変わっていく可能性も高まります。