一部の国のTikTok ユーザーは、Apple Musicのサブスクリプションに加入している場合、TikTokアプリ内で楽曲をフル尺再生ができるようになる。これは、TikTokとApple Musicの最新の連携で実現した新機能「Play Full Song」(フル尺で再生)で、ベータ版として提供が始まった。TikTokを離れることなく、アプリ内でフル尺再生で楽曲を楽しみ、アーティストや作詞作曲家、権利者には再生からのロイヤリティ収益が発生する仕組みだ。
TikTok内に、「Play Full Song」 (フル尺で再生)ボタンが表示され、タップすると、「From Apple Music」表示付きの全画面プレイヤーが立ち上がり、再生が始まる。これまでTikTokユーザーは、既存の「Add to Music App」(音楽アプリに追加)機能では、TikTokの動画で見つけた楽曲を、自分の音楽ストリーミング・ライブラリに追加できるが、フル尺再生する場合は、アプリを切り替える必要があったが、「Play Full Song」は切り替えの手間を減らし、TikTok内でフル尺再生を実現させる。
TikTok(と運営会社のByteDance)は、同アプリ内で楽曲をフル尺で配信するための独自ライセンス契約を持っていない。そのため、今回の新機能は、TikTokが直接フル尺配信するのではなく、Appleが2021年にローンチしたMusicKit APIとの連携で実現している。この連携によって、TikTok内で「Play Full Song」で再生されたフル尺楽曲は、Apple Musicの再生としてカウントされる。同時に、Apple Musicが権利者へ支払うロイヤリティ収益が発生する。
新機能を利用できる地域は現在、複数の国に限られ、米国、英国、欧州各国ではまだ開始していない。加えて、今回の新機能は、TikTokとApple Musicのみのパートナーシップだが、過去に「Add to Music App」を他サービスに拡大した経緯を踏まえると、将来的に他DSPへ拡大する可能性も予想される。「Add to Music App」はAple Music以外では、Spotify、Amazon Music、SoundCloud、YouTube Music、Anghami、Melon、TIDAL、Deezerにも対応している。
「Play Full Song」機能はまた、TikTokが以前から描いていた「音楽の発見からのフル尺再生」戦略の完全転換も示している。この戦略を実現するため、TikTokは「Resso」や「TikTok Music」といった、独自のストリーミングサービスを立ち上げたが、成功することなく、サービス終了を迎えた。終了時にTikTokは、既存のストリーミング各社との「パートナーシップに注力」する方針を示した。その結果が「Add to Music App」連携であり、今回の「Play Full Song」が次の一歩という位置付けになる。
「Play Full Song」機能は、TikTokが音楽業界やアーティスト、レーベルに対して、同アプリが単にUGCプロモーションや、”音楽発見の場”を提供する以上の価値を作ろうとする戦略の延長線上にある。
TikTokは、音楽を通じた経済効果をさらに拡大する狙いもある。同サービスによれば、投稿動画に使われた楽曲を含めて、TikTok上での露出がEU圏内のアーティストに対して2025年には18億ユーロの価値を新たに生み出した、と調査レポートの中で主張している。18億ユーロには、ストリーミング再生からのロイヤリティ収益、チケット売上、グッズ購入などが含まれる。
