Spotifyは新たにフィットネス領域での取り組みを強化するため、フィットネス企業「Peloton」との提携を発表した。今回の提携によりSpotifyはこれまで音楽から始まり、その後ポッドキャスト、オーディオブック、動画ポッドキャストへ領域を拡大したように、新たなカテゴリーとしてフィットネス領域でのエコシステムの構築を目指す。なお、今回の提携の契約金や契約条件は公表されていない。

Spotifyプレミアム会員は、追加料金無しでPelotonが提供する屋外ランニング、筋力トレーニング、カーディオ、ヨガ、瞑想など1,400本以上のオンデマンド・ワークアウトクラスにアクセスできるようになる。Spotifyは「特別な機器は不要」を強調しており、Pelotonのエクササイズバイクやトレッドミルを所有しなくても、これらのクラスが利用できる。今回の提携により、Pelotonのワークアウトクラスは、Spotifyの2億9,000万人以上の有料会員にリーチすることになる。

また、Spotifyのプレミアム会員と無料会員は、フィットネス系インフルエンサーやウェルネスブランドが作るプレイリストやコンテンツにアクセス可能になる。パートナーとなるクリエイターには、Yoga With Kassandra、Caitlin K’eli Yoga、Sweaty Studio、Chloe Ting、Pilates Body By Raven、Abi Mills Wellness、Sophiereidfitなどのコンテンツが含まれる。

Spotifyは今回のフィットネス領域への新たな展開が、マルチメディアかつマルチデバイス対応である点を強調する。テレビ画面で動画ワークアウトを開始し、ランニング時にはスマートフォンで音声コンテンツに切り替え、最後はスマートスピーカーでガイド付きのリカバリーを行うといった一貫したワークアウト体験の提供を目指す。

フィットネスはSpotifyにとって自然な次の展開領域である。同社独自の調査によれば、有料会員の約70%が月に一度は運動を行っていることが分かっている。現在世界中で1億5000万以上のフィットネス関連プレイリストが利用されており、用途もモチベーション向上、リカバリー、気分のリセットなど多岐にわたる。また最近導入された「Prompted Playlists」機能を活用したフィットネス向けプレイリストの利用も好調に推移している。

今回のSpotifyの動きは、2026年1月にブルームバーグのインタビューで、共同CEOのグスタフ・セーデルストロム (Gustav Söderström)とアレックス・ノルストロム (Alex Norström)の発言と一致する。両氏は「フィットネス関連コンテンツへの投資拡大計画」を示しており、セーデルストロムは「ユーザーが突然Spotifyを使って運動するようになっている…これは非常に大きく興味深い機会を生み出している」と述べていた。

過去にもSpotifyはフィットネス領域に取り組んだ実績がある。2015年には「Spotify Running」を立ち上げ、ランニングのペースに合わせて音楽を提供する機能や、NikeやRunKeeperとの提携を展開したが、この機能は2018年に終了している。

なお、SpotifyとPelotonは経営レベルでも接点を持っていた。Pelotonの元CEOであるバリー・マッカーシー (Barry McCarthy)は、以前SpotifyのCFOを務めた人物で、現在も同社の取締役を務めている。彼は2024年にPelotonのCEOを退任している。

今回の提携はPelotonにとっても大きな後押しとなる。同社は2025年末時点で、有料のコネクテッド・フィットネス会員が約270万人弱、総会員数は580万人であったが、これらはいずれも前年から7%および6%減少していた。

SpotifyとPelotonは、いずれも音楽権利者とのライセンス契約を締結し、収益を分配しているが、その規模は大きく異なる。Spotifyは2025年に音楽業界へ110億ドルを支払ったのに対し、Pelotonでは2026年から2030年にかけての最低保証ロイヤリティ額が1億4,650万ドルに設定されている。