
YouTubeは現在、韓国でYouTube PremiumとYouTube Musicのバンドルプランを解体するよう、同国の公正取引委員会 (FTC)から圧力を受けています。FTCは、YouTubeが韓国においてユーザー獲得を優位に進め、他社の音楽ストリーミングサービスに対して不公平な競争を行っている可能性を調査しています。
韓国のKorea Timesは、市場調査会社Wiseappのデータを引用し、2025年3月時点で、韓国においてYouTube Musicの月間アクティブユーザー数が953万人に達したと報じています。同サービスの数字は、Melonの644万人、Spotifyの328万人、Genie Musicの259万人を大きく上回っています。このような韓国内の状況を受けて、ローカルサービス各社や競合各社は、YouTube Musicに対抗するため、ユーザー獲得に向けた戦略の見直しが進んでいます。
Melonは、K-POPファンダムに特化した戦略をさらに強化し、独自の競争優位性を確立しています。K-POPアーティストのファンを優先した限定コンテンツの提供、ファンミーティングイベント、アーティストとのビデオ通話など、ファンエンゲージメント機能を拡充してきました。Genie Musicは、現代自動車とのパートナーシップを通じて、運転や旅行など利用シーンに最適化した戦略を行っています。利用者のコンテクストに応じた音楽体験の提供を重視するようになった結果、車内での音楽利用者数は前年比で59%増加したと報告されています。このように、韓国のDSPは、従来の人気コンテンツ獲得やプレイリストの展開から脱却し、韓国の強力なファン文化とのシナジーや、音楽消費の最適化に焦点を絞り、ライトユーザーをサブスクリプション利用者へ転換させる戦略を展開しています。
今後、YouTubeは、韓国のストリーミング市場において、YouTube PremiumとYouTube Musicが分離した場合の対策として、現在アメリカやオーストラリアなど一部の国で展開する低価格の「YouTube Premium Lite」プランの導入が示唆されています。Liteプランでは、YouTubeの動画視聴を広告無しで可能にしますが、オフライン再生やバックグラウンド再生などは提供されず、機能は限定的なサービスです。韓国の音楽市場は、YouTubeとローカルDSPが競争を続けることで、サブスクリプション利用者獲得が増加し、市場の成長に繋がることが期待されます。