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スーパーファンやファンダム・コミュニティが音楽に求めるものは何か、を議論する機会が音楽業界の中で増えてきた昨今、そのヒントとなるデータも示されている。音楽・メディア専門の調査会社、MIDiA Researchは、米国で音楽グッズ、フィジカル音源、チケットのいずれかの購入者1000人を対象に、購買行動について調査を実施し、データをまとめた。同社によれば、グッズ購入では依然としてTシャツが主力商品であり続けるが、若年層はTシャツ以外の多様なグッズを求めている、との結果だった。16〜24歳ではTシャツよりも、フーディー、ポスター、キーホルダー、ジュエリーといったアイテムの人気が高くなる傾向がある。

また若年層には、分かりやすいアーティストやバンドのロゴや、主張の強いデザインよりも、控えめで、分かる人に分かるデザインが好まれる。ファンベースの傾向に合わせて、より特注感あるグッズの制作を行うアーティストチームも現れており、アーティストの実例として、アール・スウェットシャツのインセンス、サブリナ・カーペンターのパジャマセット、ボン・イヴェールのホームフレグランスを挙げている。同時に、若年層はアナログ・レコード購入、ヴァイナル需要を牽引している層であり、16〜24歳の回答者の27%がヴァイナルを購入していると答えている。

ジャンルのファンダムがニッチになれば、ファンの支出額が高くなる傾向も示された。特に、ヒップホップとR&Bでは、回答者の半数以上が、グッズ、フィジカル音源、チケット購入の全てで、平均を上回る金額を支払っていることが分かった。その一方で、ロック・ファンによるチケット購入は平均を上回ったが、グッズやフィジカル音源購入はそれほどではなかった。MIDiAの調査では、ヒップホップはグローバル消費者全体で3番目に人気のジャンルで、16~19歳では最も人気が高く、20~24歳では2番目に人気が高いジャンルだった。

しかしポジティブな話題ばかりではなく、注意したいデータも示された。回答者の39%は、時に自分やファンダムがアーティストから搾取されていると感じると答えた。また回答者の半数弱は、グッズが手の届きにくい価格になりつつあると答えた。ファン体験への期待が上がれば、ライブやグッズへの需要と購入も同時に高まるが、価格設定は熱心なファンにとって、無視できない材料となりつつある。

MIDiAのアナリスト、タティアナ・シリサノ (Tatiano Cirisano)は、「ファンダムを急いで収益化することではなく、まずは育てることです」と警鐘を鳴らし、「あらゆるリリース、ドロップ、キャンペーン施策の重みがこれまで以上に増しています。求められるのは、ファンからさらに多くの支出を引き出すことではなく、ファンと一緒に価値を構築することです。信頼や繋がりを犠牲にするのではなく、強めていく慎重かつ思慮深いアプローチが必要です」と説明している。