MQAは、11月13日から15日に幕張メッセで開催された、メディア&エンターテインメント総合展示会Inter BEE 2019で、WOWOWとパートナーシップを組むことで実現した、世界初となるHDビデオと高品質オーディオのフル・デモンストレーションを行なった。MQAの日本における取り組みについて、創設者のボブ・スチュアート氏に話を伺った。

「40年以上にわたって、テレビの画質はどんどん向上してきました。以前は低品質でしたが、VCRやDVD、HDなどが出てきたことによって、画質は格段に良くなっていったのです。しかし、音質はそうではありません。画質がどんどん高品質になっていくのに対して、音質は低いままでした。我々MQAのユニークな技術によって、音を高品質にするだけでなく、高解像度な音を動画と合わせてパッケージ化する機会が生まれたのです。それが、今回のWOWOWとのパートナーシップです。WOWOWは映画などに加え、ライブも放送しています。スポーツも、音楽もです。コンサート・ホールやクラブ、もっと大きな会場からのライブ録音など、様々あります。こういったプログラムでは、音質が大きく関わってくるのです。」とスチュアート氏は語る。

さらに、今回のWOWOWとのパートナーシップについて、「高画質と高音質を合わせるのは、世界初の取り組みです。全ての国に影響を与える可能性があるのです。すぐにどの国や地域でも、動画のライブ配信や、放送などに使用できるようになるでしょう。」とスチュアート氏は期待を述べた。

また、日本の市場については次のように述べている。「日本の市場は、高品質を求める傾向が高いです。日本人は、品質が高いものを歓迎しているのです。人々が音楽に対してお金を払うということは、アーティストにとって良いことです。さらに、我々にとっても健全な市場を提供することに繋がります。日本ではフィジカルがまだ売れています。実際、昨年の日本における音楽市場の75%はフィジカルでした。ほとんどの国はゼロに近い状態であるにも関わらずです。日本の音楽企業数社とも話をしましたが、彼らは、フィジカルの売り上げが減少することは避けられないことではないと考えているのです。例えば、Spotifyの生まれた地であるスカンジナビアでは、ほぼフィジカルは終わっていて、消えかけています。しかし、日本ではフィジカルとストリーミングの両方が成長しています。それは、日本に、異なる種類のエンゲージメントがあるからだと思っています。音楽ファンで、アーティストが好きなら、ストリーミングで発見しながら、YouTubeでも再生して、さらにはCDも購入するという、非常に興味深い傾向です。日本のモデルに倣って、他の市場でも一部フィジカルの増加が促される可能性もあるのではないでしょうか。ただ単にCDを買うだけではなく、付属の本やチケット、アーティストと触れ合う機会などを買うということです。」

さらに、日本における音楽ストリーミング市場の発展については、「まだ時間がかかると思います。多くの人は、アップルの端末を使っているからという理由だけで、Apple Musicを持っています。同じことがAmazon Musicにも言えます。つまり、サブスクリプション登録者の大部分が、能動的にストリーミングを選択していないと言えるわけです。また、ストリーミングが悪魔でないことを理解し始めている企業もいますが、非常に保守的な市場なので、かなり時間がかかるのではないでしょうか」と述べた。

「日本では、ユニバーサル・ミュージックやワーナー・ミュージックとも協力しています。どちらも日本国外からのカタログも豊富ですが、有名な邦楽アーティストのカタログも多くあります。他にも、インディーなど、多くのレーベルとも協力しています。基本的に、レーベルとの契約では、全ての音楽を使用できるようにすることで合意しています。カタログが利用可能かどうかは、アーティストがどこに所属しているかによるということですね。」

最後に、日本のレーベルに向けたメッセージを尋ねたところ、「MQAは非常にシンプルな仕組みなので、是非利用して頂きたいです。日本は、人々が音楽を尊重し、アーティストをサポートし、品質を重視する、本当に素晴らしい音楽市場だと思っています。」と締めくくった。