アーティストやレコード会社は昨今、スーパーファンと直接繋がる手法や、エンゲージメントを高めるツールの活用を模索している。また、ストリーミング依存の収益モデルから脱却し、スーパーファンからの収益強化を図るDIYアーティストも増えている。

成長著しいディストリビューターのToo Lostは先日、スーパーファン向けD2Fプラットフォームの「EVEN」との提携を発表した。これにより、Too Lostを利用する40万組以上のアーティストやレーベルに対し、EVENのサービス利用が可能となり、スーパーファンを活性化する高いエンゲージメントの醸成と収益最大化の手法を実践できるようになる。EVENを利用するアーティストやレーベルは、ファンを獲得した後、チケット販売やグッズ販売、デジタルコンテンツ、ファンミーティング体験など様々な商品をスーパーファン向けに販売し、収益源を増やすことが可能になる。さらにToo Lostは契約アーティストに対して専任のクリエイティブおよびマーケティング支援も提供する予定だ。

EVENは現在、110カ国以上、3000以上のレーベルやディストリビューターを通じて50万組以上のアーティストが利用可能となっている。EVENの強みは、幅広いシステム対応の選択肢で、30以上の決済方法と140の通貨に対応している。また、EVENで販売される商品はLuminateのセールスデータに換算されるため、Billboardチャートに反映される唯一のスーパーファン・プラットフォームという強みも持つ。同社は、今年に入り、アメリカのSecretly DistributionやUnitedMastersといったディストリビューターと契約を結ぶなどサービス展開を拡大させ、インディーズレーベルやアーティスト向けの収益化を支援している

EVENは、これまでにJ. コール、6LACK、チャンス・ザ・ラッパー、Mt. Joy、ラッセルなど、著名なアーティストたちに活用され、実績を積んできた。またToo Lostによれば、契約するアーティストの一部は既にEVENを利用し収益を伸ばしていることを明らかにしているフォロワー数2000人のDIYアーティストが23人のスーパーファンから700ドル (約11万円)の収益を上げた。また月間リスナー数160人だったDIYアーティストがEVENのキャンペーン立ち上げから最初の24時間で200ドル (約30,000円)を売り上げた事例も報告された。一度の額は少額かもしれないが、同じ額を大手DSPやSNSで上げるには、相当の時間と労力を要することを考慮すれば、効率的な手法と捉えるアーティストやマネジャーも少なくないだろう。