Spotifyは、今週から同アプリ内の「Upcoming Releases」(新作リリース」ハブにおいて、プリセーブ数を開示する方式に変更した。公表されるプリセーブ数は「トップ10のカウントダウン」ランキング上位10作品で、従来は、順位がランキング形式で表示され、プリセーブ数は非公開だった。

この変更で、驚異的なプリセーブ数を獲得しているのが、テイラー・スウィフトの最新アルバム『The Life of a Showgirl』だ。10月3日にリリース予定の同作は、プリセーブ数が560万以上に達した (執筆時の10月1日には564.52万回)。同作は500万以上のプリセーブを記録し、これは、Spotify史上最多のアルバム・プリセーブ記録となった。これまでのSpotifyのプリセーブ記録は、テイラー・スウィフトの2024年リリースの『The Tortured Poets Department』だった。

もちろん、月間リスナー数が8600万人以上を有するテイラー・スウィフトの世界中のファンが、新作をプリセーブすること自体、驚きではない。しかし、Spotifyは、今回のプリセーブ数の記録と、数値の開示は、『The Life of a Showgirl』のリリース戦略が、他のアーティストやレーベルに示唆を与えるものであると考えている。アルバムの情報解禁は8月13日、婚約者のトラビス・ケルシーと弟のジェイソン・ケルシーが配信するポッドキャスト番組にゲスト出演して行われた

「リリースに向けた数週間、テイラーは一連の戦略を展開し、期待値を高めました。トラックリストの公開、(スーパーファン向けに)Fans Firstマーチャンダイズの限定販売、そしてファン向けに特別なSpotify Clipsの公開などを行ってきました」

A New Way for Fans To Get Hyped for New Albums Is Here—Meet the Upcoming Releases Hub — Spotify

そして、Spotifyは次のように指摘している。

アーティストがカウントダウンページを最大限に活用するための効果的な手法は次の通りです。SNSで積極的に共有すること、ティーザーや舞台裏動画といった魅力的なショートコンテンツをアップロードすること、そしてできるだけ早い段階でカウントダウンページを設定することです。平均的に、リリースの少なくとも7日前に公開されたカウントダウンページは、それ以降に公開された場合と比較すると、ほぼ2倍のプリセーブ数を獲得しています。その効果は持続的で、カウントダウンページを通じてプリセーブしたリスナーの約7人に一人が、リリース週には『スーパーリスナー』に変わります。これは、カウントダウンページが単に初週の再生数を押し上げるだけでなく持続的なファンダム形成に寄与する仕組みであることを示しています」

Spotifyが言う「スーパーリスナー」の定義は、Spotify上で個々のアーティストに対して最もエンゲージメントの高いリスナー層で、アーティストの月間リスナー数のわずか2%を占めるに過ぎない。しかし、月間再生数の18%以上、さらにチケット購入の50%以上を生み出す存在で、アーティストの収益最大化に最も貢献する層だ。

プリセーブ機能は、2018年にApple Musicが先駆けて導入した (同プラットフォームの呼称は「プリアド」)。最近ではYouTube Musicもカウントダウンやプリセーブの機能を導入した。

つまり、プリセーブとカウントダウンの組み合わせは、再生数を伸ばすだけでなく、ファンダムを醸成する機能である、という考え方がDSP各社や音楽業界全体に広がっているマーケティングのトレンドであると言える。

カウントダウンページと連動して、Spotifyはアルバム・リリースを記念して、テイラー・スウィフトのチームと共同でグローバル・マーケティング・キャンペーンを展開している。その一つには、ニューヨークで9月30日から10月2日まで没入型ポップアップイベント「The Life of a Showgirl: A Spotify Experience」を開催する。来場者はインタラクティブなフォトスポットでの撮影やイースターエッグの探索、最新アルバムの世界観を体験できるコンテンツが用意されている。