ワーナー・ミュージック・グループが、米国証券取引委員会(SEC)にIPO(新規株式公開)の申請をしたことで、音楽業界に驚きをもたらした。ワーナー・ミュージック・グループは以前にも、公開企業だったことがあったものの、2011年に投資グループのAccess Industriesに、33億ドルで買収され、非公開となっていた。

2011年以降、ワーナー・ミュージック・グループは四半期および年次の財務結果を発表し続けてきたため、事業に関する数値のほとんどは既によく知られているが、IPOの申請書も全文を確認することができるようになっている。申請書には、ワーナー・ミュージック・グループが再び上場するタイミングとしてなぜ今を選んだのかに関する理由も記載されている。「音楽エンターテインメント業界は大きく、グローバルで、活気に満ちています。音楽のデジタル消費における消費者および人口統計学的傾向に促進され、録音原盤および音楽出版業界は成長しています。」

申請書によると、「時間の経過とともに、より広範な市場がさらに発展し、価格が上昇することにより、ストリーミングの収益は増加する」とワーナー・ミュージック・グループは考えており、ノルウェーにおける、Spotifyの価格引き上げ実験や、アマゾンのAmazon Music HDプランの価格設定などを例として挙げている。また、スマートスピーカー も業界における収益成長の大きな要因として言及された。「ニールセンによると、現在、音楽を聴くために毎週スマートスピーカーを使用している米国消費者の61%が、サブスクリプションにもお金を払っています。」

また、申請書には、ワーナー・ミュージック・グループがストリーミング・サービスのDeezerおよび、テンセント・ミュージックの少数株を所有していることも記載されている。ワーナー・チャペルのカタログや、他の出版社を含め、「選択的に買収の機会を追求し続ける」というワーナー・ミュージック・グループの意図を表していると言えるだろう。

今後しばらくは、申請書から噛み砕くべきポイントがたくさんある。例えば、申請書の「リスク」欄で、ワーナー・ミュージック・グループは競合となりうる相手を想定している。「他の録音原盤企業だけでなく、作品を自分で配信することを選択するアーティスト(音楽がフィジカルではなくオンラインで配信されるようになったため、より実用的になっています)、また、アーティストもしくは録音原盤企業と直接取引を行おうとする、他業界の企業(Spotifyなど)」だ。驚くべき内容ではないが、音楽業界が今後どのような展開を見せるかを想起する上では有用であると言えるだろう。

また、申請書によると、ワーナー・ミュージック・グループの前会計年度では、アップルとSpotifyが売上高の27%を占めており、「少数のデジタル音楽サービスが、正規のデジタル音楽事業のほとんどを支配しているため、デジタル音楽サービスの卸値を引き上げるために我々が出来ることは限られています」という一文が付け加えられている。こちらも、未知の課題であるとは言い難いが、ストリーミング時代における、音楽業界内のパワーバランスの変移を表す内容となっている。こういった傾向がSpotifyやテンセント・ミュージックの業績にどのような影響を与えているかを精査しているアナリストたちが、ワーナー・ミュージック・グループに関しても、同様に分析を始めるようになるだろう。

我々は、メジャー・レーベルのことを、音楽業界という文脈の中では、大手だと捉えている。しかし、メジャー・レーベルが活動している世界を俯瞰してみると、周りには、アップルやグーグル、アマゾンといったテクノロジー大手、Spotifyやテンセント・ミュージックなどの上場している音楽サービス企業が存在しており、また、音楽および、音楽の権利に対する大規模な機関投資家からの関心も再び高まってきている。メジャー・レーベルにとって、こういった状況にどのように対応するかが、将来を決めると言っても過言ではない。ワーナー・ミュージック・グループは再び上場を予定しており、また、最近では、アメリカの未公開株投資会社であるプロビデンス・エクイティ・パートナーズ社との合弁会社も立ち上げている。ヴィヴェンディはユニバーサル・ミュージック・グループの株式をテンセントに売却し、他の企業への売却も視野に入れている。音楽業界最大のプレーヤーも、将来的な進歩を促進するために、大きな動きを取ることを余儀なくされていると言えるだろう。