YouTubeは、すべての動画フォーマットで、再生回数のカウント方法を変更し、YouTubeショート方式の基準に統一すると発表した。

8月24日以降、動画の再生が始まった瞬間から「再生」としてカウントされる。

これによって、アーティストやレーベルが投稿するミュージックビデオやリリックビデオ、ライブ配信、BTS動画などの再生回数が、大幅かつ急激に伸びることが期待できる。

YouTubeは自社ブログで次のように説明する「2026年8月24日より、動画の再生が始まった瞬間——すなわち最初のフレームから——を1回の再生としてカウントします。この基準は今後、あらゆるフォーマットにおいてグローバルで適用されます」

https://support.google.com/youtube/thread/433409976?hl=en

現在、YouTubeでは、再生回数のカウント方式は動画の形式によって違いがある。
長尺動画 (通常の動画投稿):再生ボタンのクリック後、30秒の視聴
ライブ配信動画:30秒の視聴
YouTubeショート:ショート動画の再生が始まった瞬間

YouTube Musicでの再生回数のカウント方法は、音楽業界の標準ルールである収益分配を受ける基準や、グローバル音楽チャートへの計算の基準などと互換性を保つため、30秒の視聴で「再生」とカウントされる。

30秒の視聴時間はアートトラック、ミュージックビデオ、リリックビデオ、UGCなど長尺動画が対象になっている。

YouTube Musicアプリでオーディオトラックやミュージックビデオを視聴した場合、YouTube プラットフォームのアートトラック、公式ミュージックビデオそれぞれの視聴としてカウントされる。

YouTubeはさらにこう説明する「8月24日以降、YouTube上で再生回数が表示されるあらゆる箇所において、新しい再生回数の指標が適用されるようになります(つまり、クリエイターは今後、総再生回数がこれまでより速いペースで増加していくのを目にすることになるでしょう)」

今回の変更は、YouTubeプラットフォーム上で再生を記録しユーザーに公開する上で、あらゆる形式間の違いを無くし、一貫性を高めることを目的としている。

YouTubeは昨年3月、YouTubeショートの再生回数のカウント方式を変更したが、それ以来の大幅な変更となる。

変更における大きな注目点は、動画の収益化への影響だ。答えはノーだ。

YouTubeによれば、クリエイターへの収益計算の軸は、引き続き「エンゲージド視聴」(Engaged views)と「エンゲージド視聴時間」(Engaged Watch Hours)が指標となる。

この数値はYouTube Studio内の「アナリティクス」メニューで確認できる。

つまり、収益化には意図した十分な視聴、動画を一定時間視聴し続けたユーザー数などに基づいて計算される。

また、今回の変更はYouTube パートナープログラム (YPP)への参加条件にも影響は無いとのこと。

今後のYouTubeチャンネル運営への影響

チャンネルを運営するアーティストやレーベル、マネジメント、動画クリエイターにとって、視聴回数が急激に増えることで、バイラル化する楽曲が今まで以上に増える可能性が高まってくる。

バイラルする可能性ある楽曲は、新曲や現行のヒット楽曲、ヒットアーティストの楽曲だけに留まらない。

8月24日以降に公開されるカタログ楽曲の動画も対象になるからだ。

つまり、ミュージックビデオやリリックビデオを新たに制作したカタログ楽曲が、日本以外の地域や国、都市で視聴され、急激に再生回数が上がる、といった効果も期待できる。

まず、カウント方法の変更は、多くの動画の再生回数を急激に増やすはずだが、中には大幅に再生回数が水増しされる可能性も予想される。

そうした可能性への配慮かもしれないが、YouTubeが収益化の評価基準を変えず、引き続き動画を意図的に視聴した回数や視聴時間を用いることも理解できる。

YouTubeが変更するのは、プラットフォーム上で表示される視聴回数の数値だ。

動画を活用したいアーティストや音楽マーケターにとって、オーディエンス分析や動画視聴データ分析は、より一層の注意が求められるだろう。

視聴回数が増えた分、実際には、動画にどれだけエンゲージされたかを把握することが難しくなったとも考えられる。言い換えれば、動画の視聴回数が増えても、アーティストのコアファンが増えない、収益化するための音楽サブスクリプションでの再生やライブでのチケット販売、グッズ販売に繋がらない、狙った国やターゲット層からの再生が伸びない、といった多くの音楽マーケターが抱える課題を解決できるかは現時点では見えていない。

また、動画視聴回数が増えた分、アーティストに対するオファーや契約条件の判断基準が、よりシビアに見られる可能性も考えられる。

アーティストやレーベルの中には、急激な視聴回数の伸びを謳い文句に、新曲を宣伝したいと考える人もいるかもしれない。

しかし、DSPへのピッチや提案、企業タイアップ、メディア露出、音楽フェスティバルやイベントへの出演、新人アーティストとの契約、レーベルやディストリビューターの契約条件など、さまざまな場面で出されるオファーや交渉の場面において、相手によっては、視聴回数や再生回数といった指標が今までほどの価値を持たなくなる可能性も考えられる。

より重要になっていく指標は、エンゲージメントを示す再生や時間、既存オーディエンスに関する数値と、潜在的オーディエンスに関する数値かもしれない。

そう考えると、今回のYouTubeの再生カウント方法の変更を機に、指標の見直しや、活用方法のアップデートが求められる。

そして、エンゲージメントの高い再生や視聴時間を獲得し、維持するためのオーディエンス戦略やクリエイティブ、マーケティング戦略を考える必要が出てくるだろう。

投稿者

  • ジェイ・コウガミ

    ジェイ・コウガミは、Music Ally Japanのエディトリアル・ディレクターで、ニュースレター記事執筆、イベントおよびカンファレンスのモデレーターを担当しています。