• 投稿カテゴリー:AI

ユニバーサル ミュージック グループ (UMG)は、音楽ディストリビューター大手の「DistroKid」に対して、Spotifyなどストリーミングプラットフォームを粗悪なAIスロップで氾濫させたとして、同社を提訴した。

米国連邦裁判所に提出された訴状で、DistroKidは粗悪なAI生成音楽を大量に流通させる主要な配信経路であると述べている。

また、DistroKidは違法かつ詐欺・不正行為で成長を遂げてきたと主張する。

特に、DistroKidは大量のAI生成、SEO最適化、著作権侵害に該当するスロップを配信市場に飽和させる行為を助長しながら、AI生成の粗悪なコンテンツがあたかも人間のアーティストが制作した音楽であると、欺瞞的に装わっていると指摘する。

また訴状では、DistroKidのUMG作品に対する著作権侵害、アーティストなりすまし、ISRC窃取、といった不正行為も指摘されている。

訴状の中でユニバーサル ミュージックと傘下のキャピトル・レコード、キャピトル CMGは、DistroKidがこれまでSpotify、Apple Music、YouTube、TikTok、Metaなどの配信プラットフォームに対して、同社が人間のアーティストが制作した楽曲のみを扱うディストリビューターであると不当に自社を偽っていると述べた。

そして、実際には、プラットフォーム各社が定めるポリシーや、同社も加盟するストリーミング詐欺の撲滅を目指す業界横断のタスクフォース「Music Fights Fraud Alliance」の理念に反した不正行為を続けているという。

DistroKidが行う不正行為の具体例として「Lofi Chill」というアーティストが1年間で4,562曲を配信した事例を挙げており、これは月20-30枚のフルアルバムに相当するという。

別の悪質行為の事例では、「Chill Flow Radio」は1,901曲、「Mellow Vibes Radio」は1,615曲をそれぞれ配信したとされる。

訴状はこれらのアーティストの膨大なカタログを技術的に分析した結果、その楽曲の大半(Chill Flow Radioは97%超、Mellow Vibes Radioは98%超)が、AI作曲ツールのSunoによる生成であると付け加えている。

名称について、これらは実際のアーティストではなく、検索結果やアルゴリズムによるプレイリストに表示される目的で設計されているとされる。

訴状はまた、DistroKidがAIに限らず、著作権侵害も助長していると主張している。

UMGはすでに、コンテンツIDやその他のコンテンツ識別ツールを用い、DistroKidが配信する侵害楽曲の約2,000件を特定したとしており、証拠開示手続きを通じて、その他数百万の楽曲を評価することを見込んでいる。

侵害の内容では、DistroKidがUMGアーティストの人気楽曲をスピードアップ、リミックスしたバージョン、既存の録音物に新たなボーカルを重ねた楽曲など、権利侵害が明らかな違法楽曲のアップロードを行っているという。

当該楽曲の公式ジャケット画像をそのまま複製して配信する楽曲も取り扱っているとされる。

ストリーミングサービス側からDistroKidに対してこれらの権利侵害楽曲に関する通告が行われたが、同社は当該楽曲の権利を保有していないことを認めた後も、全く同じ音源をストリーミングサービスへ配信し続けているという。

また訴状では、DistroKidが「ISRC窃取」を利用したアーティストなりすましを容認しており、収益分配を受け取るべき正当なアーティストや権利者から再生数と収益を奪っていると記する。

DistroKidを利用する悪質な不正行為者が、正規の楽曲に割り当てられたISRCと同一のコードで楽曲を登録する手口で、なりすましアップロードが行われているという。

事例として、「Candy Dulfer」というアーティストがアップロードした「Juice Newton」というタイトルの配信楽曲を挙げ、同曲にはJuice Newtonの「Angel of the Morning」と同一のISRCが付与されていると指摘する。

今回の訴状でUMGは、莫大な損害賠償と、権利侵害が確認される楽曲の削除、関連するDistroKidのアカウントの停止に加え、DistroKidが自社のコンテンツをあたかも人間のアーティストによる音楽であるかのように見せかける行為の差し止め、同社によるUMG著作権作品のさらなる侵害の差し止めを求めている。

今回の訴訟は、音楽業界やストリーミングプラットフォームが音楽生成AIの楽曲や利用の急増と、それに伴うストリーミング不正行為への対策を模索する中で起こった。

音楽業界やプラットフォーム各社は、業界を横断したAI生成楽曲やアーティストを識別する仕組みや基準の導入を進めている。

今回の訴状で主張された重要な論点は、大量のAIスロップ、欺瞞的なAI楽曲、あるいは権利侵害するコンテンツの配信によって、正当なアーティストや権利者が本来受け取る収益、リスナーが奪われている点だ。

また、人間のアーティストが制作し配信した楽曲や、別バージョンであるかのように装うことで、リスナーや消費者を偽り、正当な楽曲を再生しているという間違った認識を持たせることへ繋がりかねない。

投稿者

  • ジェイ・コウガミ

    ジェイ・コウガミは、Music Ally Japanのエディトリアル・ディレクターで、ニュースレター記事執筆、イベントおよびカンファレンスのモデレーターを担当しています。