Believe Japanは9月29日、日本のレコード会社が保有する音楽カタログの活性化に向けた取り組みを強化する施策を発表した。
https://www.believe.com/ja/japan
同社は、新譜・旧譜を含む国内音楽カタログを対象に、Believeがグローバルで培ってきたカタログ運用の手法や、デジタル・ディストリビューション、メタデータ整備、アルゴリズム対策などの知見を活用し、ストリーミング市場におけるカタログの価値向上を支援する。
未整備のメタデータやストリーミング対応が遅れているカタログ楽曲を継続的に整備・運用することで、国内だけでなく海外を含めた新たなリスナーとの接点と収益化を生み出していく狙いだ。
Believe Japanでは、一定規模の音楽カタログを保有するレーベルを対象にした支援プロジェクト「Timeless Tracks Project」を展開している。
カタログのデジタル運用や配信環境、メタデータ整備などを支援し、各レーベルが抱える課題に応じ、Believe本社のオペレーションチーム、国内各部門が連携した支援体制で取り組んでいる。
同社は、このプロジェクトを推進するため、2026年9月に、川崎“yOSy”義博氏を「Japan Label Catalog Management Lead」に迎えた。
川崎氏はポニーキャニオンでレコーディングエンジニアとしてキャリアをスタート。
その後、音楽配信の黎明期からコンテンツのクオリティ管理、デジタルマーケティング、DSPとのリレーション構築、海外ライセンス、DSPとの契約交渉など、幅広いデジタル音楽ビジネスに携わってきた。
Believe Japanではカタログ領域の専門人材として、国内レーベル、本社のオペレーションチーム、国内各部⾨をつなぎながら、Timeless Tracks Projectの推進役を担う。
今回のカタログ活性化施策に合わせ、Believe Japanは一定規模のカタログを保有する国内レーベルからの相談・受け入れ体制も強化する。
2027年3月までにBelieve Japanとの契約が成立し、所定の条件を満たしたレーベルを対象に、カタログ運用やメタデータ整備などを含む特別施策を実施する予定だ。
カタログの規模やデータの状況、必要な支援内容については、各レーベルとの協議を通じて個別に検討する。
また、2026年10月以降に、レコード会社や音楽事業者を対象とした「Believe カタログ戦略ワークショップ」も順次開催する。Believeが各市場で蓄積してきた知見や事例を紹介する。
Believe Japanが、カタログ活性化・旧譜の整備に注力する戦略をとる背景には、音楽市場の変化がある。
特に重要視されているのは、旧譜を「世界中どこで、いつ再発見されても最適な状態」に整え、DSPやSNS、映像作品向けに運用を継続させるカタログ戦略だ。
現在の音楽市場では、数年前または数十年前に発表された旧譜が、TikTokやYouTube、Spotify、さらにはNetflixやAmazon Primeなどの番組、映画、ドラマ作品などをきっかけに再発見され、ストリーミングで急速に再生を伸ばすケースが相次いでいる。
これらの過去曲を適切に運用するレーベルや権利者、アーティストにとって、旧譜は継続性の高い新しい収益源を生み出す資産として、その価値と可能性が見直されている。
代表例としてあげられるのは、ケイト・ブッシュが1985年に発表した「Running Up That Hill (A Deal With God)」だ。Netflixの「ストレンジャー・シングス」シーズン4で使用された同曲は、37年前の楽曲がチャートで上位に入り、アーティストの再生を拡大させるほど、世界的に再び注目を集めた。
ショート動画や、UGC投稿、ドラマの切り抜きがバイラル化した動画を見たユーザーがSpotifyやApple Musicなどで再生し、アルゴリズムやレコメンデーションを通じてさらに別のリスナーへ広がった事例は、他の旧譜でも見られている。
発売から長い時間が経過し、眠っていた楽曲であっても、新しい世代や海外のリスナーにとっては、初めて出会う「新しい音楽」と認識されるようになった。
発売当初は国内向けだった旧譜が、国境を越えて海外で再生されるハードルも下がっている。
こうした市場の変化は、レコード会社の中で、カタログ楽曲の価値の見直しと、戦略的な位置付けを変えている。
しかし、新しい機会が生まれる一方で、国内のレコード会社にとって、カタログ運用の体制や技術の確保、グローバル対応のメタデータ整備は、課題としてあげられてきた。
Believe Japanが進める「Timeless Tracks Project」は、最新の配信環境への対応や、作品に紐づくメタデータの整備を支援することで、従来のレコード会社では見逃されてきた機会を新たな収益化へつなげていく狙いが考えられる。
SNSや映像作品をきっかけに、発売から長い時間を経た楽曲が再注目されるケースが生まれる現在、「思いがけない再ヒット」は、どのレコード会社の旧譜でも可能性がある。
過去作品を眠らせたまま保管するのではなく、いつ生まれるか分からない「再発見」に備えてデジタル環境へ最適化し、新たな成長につなげていく。
国内レーベルにおいて、こうしたカタログ戦略の重要性は今後さらに高まることが予想される。
