Spotifyは、同プラットフォーム上でアーティストがAI生成ではなく人間であることをユーザーが認識できるよう、新たな「認証済みバッジ」(Verified by Spotify)を導入する。現在アーティスト・プロフィール上で順次展開が始まっている。同社が設定する「真正性を証明する明確な基準」を満たすアーティストは、プロフィール名の横に「Verified by Spotify」の文字と緑色のチェックマークアイコンが表示される。Spotifyによれば、基準は複数の領域が審査対象となる。具体的には、アーティスト・プロフィールにリンクしたSNSアカウントが運営されていること、継続的なリスナー活動、グッズやコンサート日程などとの連携などを示す必要がある。これはSpotify上だけでなく、Spotifyの外でも識別可能なアーティストが実在することを示す真正性のシグナルとなる。加えて、プラットフォーム規約の遵守、Spotifyに対する詐欺行為やスパム攻撃、悪質な行為者でないことが審査基準となる。

先日、Music Ally が主催したアーティスト・音楽クリエイター向けのワークショップ・カンファレンス「Artist Ally Summit」に登壇したSpotifyのアーティスト・海外音楽業界パートナーシップ責任者のブライアン・ジョンソン (Bryan Johnson)は、新たな認証バッジ制度をこう説明した「これはリスナーに対して、信頼できる真正性と信用の証明を提供するものです」そして既存の青色のチェックマーク制度については「これは10年前の制度であり、Spotify for Artistsのプロフィールを申請したアーティストを示すものでした。真正性を示すものではありません」と指摘した。

Spotifyはブログの中で、認証バッジの展開は、ローンチ時点でリスナーが積極的に検索しているアーティストの99%以上が認証されていると述べた。対象アーティストの数は数十万組に上るという。同社は審査と認証バッジの展開を進めるにあたり、「コンテンツファーム」を使うアーティストではなく、音楽文化と歴史に重要な貢献を果たしてきたアーティストを優先して認証するとしている。ただし、現在「バッジが表示されていないから、将来的に付与されないという意味ではない」とジョンソンは説明した。Spotifyはまた柔軟な姿勢も強調している。現在は活動が停止しているアーティストや再生数が少ないアーティストでもこれまでの経歴が文化的に重要な存在である場合は認証される。新進気鋭アーティストを認証することもある。

AI音楽は審査対象外となる。「AI生成またはAI人格のアーティストを示すプロフィールは現時点では審査対象にならない」とジョンソンは述べた。「現時点」の言葉には注意が必要だ。Spotifyも「ローンチ時点では」と今回の制度について言及している。生成AIアーティストが現在は認証の対象から外れるが、仮にSpotifyがこれらのプロジェクトに文化的価値や創造性があると判断すれば、将来的に扉が開くかもしれない。

新たな認証バッジ制度に加えて、Spotifyはアーティスト・プロフィール内の新セクションのテストも行っている。新たに「アーティストの詳細」(Artist Details)を設置し、アーティストのSpotify上での活動をリスナーに対して提示する情報をSpotify独自のデータから取得し掲載する。作品関連の情報や、Spotifyエディターによるプレイリスト掲載の有無、最近のライブ情報などを表示する。例えば「2012年以降に音楽をリリースし、Spotifyグローバル上でアルバム、EP、シングル、リミックスを含む合計36作品以上公開している」といったアーティスト情報がリスナーに対して表示される。

アーティストの詳細 – Spotify

新たな認証バッジや「アーティストの詳細」セクションは、SpotifyがAI時代に向けて設計したものだ。リスナーに対する透明性向上を示す企業戦略の一部で、リスナーが聞いているアーティストが生成AIプロジェクトか、実在する人間かを明確にするものだ。この流れは、昨今のグローバル音楽業界やメジャーレコード会社がDSPに対して生成AI対策を強化するよう圧力をかけている業界全体の動きだ。実際、Spotify以外のDSPも、AI生成コンテンツと人間のアーティストの楽曲と識別するラベルを付与したり、配信と収益分配を止めるなど、対策を講じるよう音楽業界から強く指摘されている。Spotifyの今回の動きも、この流れに沿ったものだが、アプローチが少し異なる。それは、AIコンテンツにラベルを付けるのではなく、実在する人間のアーティストにラベルを付け、人間であることを認証するというアプローチだ。

一方で、認証済みバッジは、生成AIを使わずに音楽を制作し、配信していることを証明するものではない。そして、長期的な視点で考えた時、完全なAI生成コンテンツにラベルを付けるか、人間のアーティストにラベルを付けるか、といった二者択一だけの選択肢では将来的に解決できないことも生まれるはずだ。