韓国におけるYouTubeの戦略において、新たな動きがありました。

同国の公正取引委員会 (FTC)は、YouTube PremiumとYouTube Musicの韓国におけるバンドルプランの解体に向けて、韓国内の音楽ストリーミング競合他社に対する競争制限の可能性を調査してきました。FTCは、この調査において「同意審決手続き」(Consent Decree Proceedings)を開始する方針を決定したと発表しました。同意審決では、グーグルは法廷闘争を回避でき、事態を改善する是正措置をFTCに提出することが求められます。FTCが承認すれば、罰金などの活動制裁は科されず、独占禁止法調査は終了となります。

グーグルはYouTube PremiumとYouTube Musicのバンドル提供戦略は、韓国のMelonやGenie、Floや、Spotifyなどの競合の韓国に対して、大きな優位性を獲得しました。2021年には韓国での月間アクティブユーザー数は市場トップだったMelonは689万人に対して、YouTube Musicは403万人と後塵を拝していました。しかし、YouTube Premiumの加入者数が急増したことで、YouTube Musicは短期間で競合を抜き、2023年にはトップシェアを獲得するに至りました。

グーグルは幾つかの是正策を提案してきました。大きな変更では「YouTube Premium Lite」プランの導入です。同プランは、YouTube Premiumに特化したプランで、YouTube Musicがバンドルされず、低価格で提供する内容です。既に米国、メキシコ、タイ、オーストラリアなど一部の国で提供が始まっています。またグーグルは、韓国の音楽業界とアーティストと支援する目的で300億ウォン (約32億円)規模の基金を設立します。こうした対策の条件として、グーグルは罰金や追加制裁を免れることとなります。

しかし、韓国の音楽業界関係者の多くは、FTCの決定を批判する声を挙げています。今回の決定は、同団体がグーグルの市場シェア獲得戦略を事実上正当化してしまったことを意味しています。YouTube Musicはすでに同国で圧倒的に優位な立場を維持しており、国内サービスにとって、市場シェアを再び伸ばすことは非常に困難であると指摘されています。