Spotifyは、SNSアプリ上で楽曲をシェアする機能の拡充を発表した。
新たな楽曲共有機能に対応するSNSは、ThreadsとLinkedIn、WhatsAppステータス、さらにSnapchatが加わった。
この機能拡充によって、リスナーは再生中の音楽を友人やアーティストのファン・コミュニティに向けて好みのSNSを通じて共有する選択肢が増えると同時に、SNSで新しい音楽を発見する機会の増加に繋がる。
これはアーティストやレーベル、マネジャーにとって、新たな可能性が広がることを意味している。
今回の発表で最大の目玉は、Snapchatが新たに導入する「Now Playing」機能による連携だ。
SpotifyとSnapchatのアカウントを連携させることで、ユーザーは再生中の楽曲をSnap Map上にリアルタイムで表示できるようになる。
Snapchatユーザーは、地図上で見つけた楽曲をSpotifyでお気に入り保存したり、Spotifyアプリを立ち上げ再生ができる。
両社の連携はSnap Mapだけに留まらず、Snapchatのショート動画発見機能である「スポットライト」(Spotlight)や、Snapchat サウンドページ (動画投稿に使われた楽曲をまとめて表示する場所)で見つけた楽曲も、Spotifyでお気に入り保存したり再生できるようになる。
共有機能は、完全にオプトイン方式で、承認したSnapchatユーザーのみが表示できる。
ユーザーは再生状況を誰に公開するか細かく制御でき、全ての友人、特定のグループへの公開や、全員に対して非公開も選択できる。
また、共有の一時停止を3時間、24時間、無期限毎に設定できる。
過去24時間以上Snapchatが利用されていない際は、共有機能は自動的に一次停止する。
日本ではそれほど馴染みがないSnap Mapだが、2017年にローンチした同機能はSnapchatアプリ内でユーザーが友人と位置情報を共有し合える地図機能で、現在は全世界で毎月4億5000万人以上が利用する大規模なSNS機能となっている。
アーティストやレーベルにとって、世界で数億人が利用するSNSで、さらにはアルゴリズムではなく人間のユーザー同士の投稿を通じて、音楽が発見されることは、さらなる再生やエンゲージメント、ファン化への導線など、新たな機会が広がる。
Snapchatを運営するSnapは、「Now Playing」音楽共有のパートナー第一弾としてSpotifyを選択した。
同社は「まずはSpotifyから始める」と述べており、今後は他の音楽サービスとの連携も視野に入れている狙いが伺える。
Snapchatに加えて、SpotifyはLinkedInとThreadsでの楽曲共有も始める。
LinkedInへの共有では、楽曲、アルバム、プレイリスト、歌詞、ポッドキャスト、オーディオブック、「Jam」セッションなど自身の再生コンテンツを直接フィード上に共有できるようになる。
Threadsの共有を選択すると、アートワークと共に共有元の楽曲、アルバム、ポッドキャストのリンクを添えた投稿が生成される。
さらには、メッセージアプリ「WhatsApp」のステータス画面にも、Spotifyから直接共有が可能になる。
共有では、曲名、アートワーク、再生リンクを含むビジュアルカードが生成される。
WhatsAppで知り合いのステータスをタップしたユーザーは、リンクから楽曲ページに移動し再生でき、また共有された楽曲の短いプレビュー音源も再生できる。
いずれの共有機能も、SNSでの投稿で、好きな楽曲やアーティスト、ポッドキャストを共有する手間を減らしてくれる。
これらに加えて、Spotifyは同社のブログで、同アプリからSNSアプリへの共有方法10選を紹介している。
10 Easy Ways to Share Your Spotify Soundtrack With Friends
Now Playing Brings Music Sharing to Snap Map
これらのアップデートは、今後のSNS運用やマーケティング、ブランディングにおいて、注目したい点をいくつか示唆している。
一つ目は、Spotifyのソーシャル機能に対する狙いだ。
Spotifyはこれまで何度も、自社アプリ内でソーシャル機能の構築を試みてきた。
しかし、現存するSNSプラットフォームと比べて、成功したと言える機能はそれほど多くない。
今回の機能拡充は、同社がこの分野への注力を継続することを示している。
その証拠に、Spotifyは現在、リニューアルしたメッセージ機能や、共同リスニング機能「Jam」、友人と再生をリアルタイムで共有し合える機能などの訴求に力を注いでいる。
二つ目は、Spotifyの戦略の転換だ。
今回の取り組みで、Spotifyは、再生やファン・エンゲージメントをSpotifyアプリ内のユーザーだけに留めておくのではなく、外部アプリやプラットフォームでも構わずに、アーティストのファンや音楽を投稿したいユーザーがいる場所へ積極的に開放し、歩み寄っていこう、とする動きを見せた。
これは、同社の戦略の次の方向性を示している。
これは、アーティストやレーベル、ディストリビューターにとって、大きな変化であり、他の音楽サービスとの差別化の可能性が広がる。
特に、友人間やグループ内でオーガニックに投稿された音楽は、アルゴリズムによるレコメンデーションよりも、属人的な発見の喜びや会話へと繋がりやすくなる。
SnapchatやThreads、LinkedInなど、音楽を気軽に共有できるプラットフォームが増えることで、音楽やアーティストを知る機会もさらに増えていき、これまででは届かなかった場所で、新しいオーディエンスへ届く可能性が生まれる。
最後は、音楽ストリーミングの再生を「見せる方法」が増えているというトレンドだ。
Snap MapのNow Playing機能に代表されるように、地図上で再生した音楽をアバターで表示する、といった音楽ストリーミングのアプリ内では実現できなかった音楽再生を表現する方法が増えている。
音楽再生の記録や、熱量高いファン活動を見せることの重要性は、かつてないほど高まっている。
その証拠に、音楽ストリーミングで再生が伸びる楽曲や、高いエンゲージメントを集めるアーティストの背景には、SNSとの相互関係が必ず存在するようになった。
数年前までは、時間をかけて集めてきた”知名度”あるアーティストが、音楽ストリーミングで多くの再生回数を集めてきた。
一方で現代では、SNS上で同時多発的に盛り上がるファンコミュニティを抱えるアーティストや、UGC投稿の急上昇、動画配信やテレビ中継、配信イベントを同時に見て実況しながら盛り上がる人が多く集められる、リアルタイム性の高いアーティストが再生回数やリスナー数を伸ばしやすくなっている。
「音楽を人に多く見せる方法」をいくつも見つけられるアーティスト、レーベル、チームは、楽曲リリース後でもストリーミング再生やお気に入りを伸ばし続けると思われる。
音楽ストリーミングとSNSの連携はまた、音楽業界においてより多くの有益なデータを作っていくはずだ。
今まで以上に音楽の利用や再生に関するデータは、音楽業界では今までは集めることが困難だったが、これからは多くのプラットフォームから新たなデータを取得し、新たな活用方法が広がると予想される。
