音楽ダウンロードの市場は年々縮小しており、デジタルストアの存在感も薄れ、アナログ・レコード市場のような復活の兆しも見えていない。しかし、アーティスト個人や、レーベルにとって、デジタルストアは今なお音楽ファンに向けたストーリーテリングの観点から重要な意味を持ち続けている。その流れを象徴する代表例のひとつは「Bandcamp」である。そうした中、ユニバーサル ミュージック グループは「ジャズ」のジャンルが将来性ある領域と考えているようだ。
同社のグローバル・クラシックス&ジャズ部門は先日、新たにジャズ専門のデジタル・プラットフォーム「Everything Jazz」の世界展開を発表した。これはジャズの名門レーベルのカタログ楽曲を揃えたD2Cオンラインストアで、ブルーノート、ヴァーヴ、インパルス、デッカ、フォンタナ、ECMといったレーベルが参加する。すでに日本では2024年からローンチされているが、イギリス、フランス、米国、カナダ、オーストラリアで展開が始まっている。カタログ作品や新譜に加えて、ブルーノートの「Tone Poet」や「Classic Vinyl Editions」、ヴァーヴの「Vault」や「Acoustic Sounds」といった高付加価値のアナログ再発シリーズも展開される。今後UMGは、Everything Jazzを通じて、カナダ、オーストラリア、イギリスなど世界各地のジャズ・フェスティバルと連携する予定とのこと。
特徴は、単に音源を販売するだけに留まらない。豊富なジャズのカタログを丁寧に独自目線でキュレーションしている点が特徴となる。ジャズにまだ馴染みのない人、ジャズの歴史やサブジャンル、アーティスト、レーベルについて十分に知らない人に向けて、入り口を用意することにも注力している。あわせて、現代のアーティストとレガシー・アーティストの双方を扱うインタビューや長文特集記事など編集コンテンツも充実させている。
サブスクリプション・ストリーミング全盛の現在において、世界最大のレーベル・グループであるユニバーサル ミュージックが、AppleやAmazonといったDSPを通さず、あえてデジタルストアを世界展開することは、非常に興味深い。特に、単なる新譜のダウンロード販売ではなく、ジャズの新規ファンを育成し、より深い視聴体験とコレクション意欲あるファンへ引き上げられる可能性がある。
