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Music Allyは2026年6月18日、ロンドンのTHE STEEL YARDにてカンファレンス「Music Ally NEXT 2026」を開催した。同カンファレンスは、音楽業界の未来を左右するテクノロジーのトレンド、そして新しい音楽ビジネスを形成する起業家と音楽スタートアップたちに焦点を当てる専門イベントである (Music Ally UKのイベント一覧はこちら)

今回の記事では、Music Ally NEXTのキーノート・セッションに登壇した、レベッカ・アレン (Rebecca Allen)へのインタビューセッションの内容をお届けする。同氏は、ユニバーサル ミュージックUKのチーフ・アーティスト & ストラテジー・オフィサー (最高アーティスト・戦略責任者)として、同社のアーティスト戦略を統括する (2026年10月13日、アレンは27年間務めたUM UKを離れることを明らかにした)。


メジャーレーベルが次の時代に向けて、どのように組織を変革してきたかを知る上で、レベッカ・アレンほど適した一次情報源は、業界内でもそれほど多くいない。

同士は、2017年にデッカ・レコード、2020年にはEMIレコードの社長に昇格。その4年後の2024年には、ユニバーサル ミュージックUKの新部門であるオーディエンス・メディア戦略部門 (AMS、Audience, Media Strategy)の責任者に就任し、2025年にはアーティスト・リレーション部門を統合した。

同社のチーフ・アーティスト & ストラテジー・オフィサーを務めるアレンは、ロンドンで開催下カンファレンス「Music Ally NEXT」に登壇し、業界の変化について語った。まず、メジャーレーベルの経営幹部への道のりについて話は始まった。

「私はデッカ・レコードで初めての女性社長でしたが、ユニバーサル ミュージックでも初の女性レーベル社長だったのです。当時、そうした役職につくことができた女性はほとんどいませんでした」

デッカ在籍初期から彼女を後押ししてくれたのは、ユニバーサル ミュージックの幹部のディコン・ステイナー (Dickon Stainer)だった。同氏は、2024年にユニバーサル ミュージック UKの会長兼CEOを務めている。

その後、アレンはEMIレコードへと移り、ジョー・チャリントン(Jo Charrington)と2年間、同レーベルで共同社長を務めた。その間、エルトン・ジョン、デュア・リパ、サム・スミス、オリヴィア・ディーンまで、幅広いアーティストと仕事をした。しかし組織再編により、オーディエンス&メディア戦略部門の社長という新たな役職へと異動することになる。

「異動が決まった時、ちょうど50歳になったばかりで、『ここが私の天井なのだろうか? もうレーベルを率いることはできないのか?』と限界を感じました。ですが実際には、この2年間は私にとって最も知的な刺激に満ちた日々になりました。新しいチームをゼロから作り上げていく過程で、彼らは私に白紙を渡してこう言ったんです。『社内で知見を共有し、学びを分かち合うことで、より多くのアーティストを支援できると私たちは信じています』と」
 

「マーケティングは今や、無数の専門性の集合体です。ひとりで何もかもこなせる時代ではありません」

メジャーレーベルにとって、こうしたアーティスト支援は日常的な取り組みだ。しかし同時に、ユニバーサル ミュージックは競争的な環境で知られる企業だ。傘下のフロントラインレーベル同士が、アーティストの獲得や、成功を巡って激しく競い合う。これは、グループの責任者たちが積極的に奨励している企業文化でもある。しかしアレンのチームは、それがすべてではないことをグループ内に示した。

「私から見ると、オーディエンス&メディア戦略チームは、企業内に横串で存在するエージェンシーのような存在です」

「現代のマーケティングは、本当に大きく変わりました。ひとりで何もかもこなせる時代ではありません。マネージャーであれ、デジタルマーケティング担当者であれ、一人では全てはできません」

「私たちは、専門家の集合体を構築しました。マーケティング担当者、メディア担当者、プラットフォームを理解する人材、消費者行動を理解する人材。各レーベルは、個々のアーティストに最適なタイミングで、私たちのチームを頼るようになりました」

「私たちのビジネスは、スピーディーに動かなければならない、方向転換しなければならない、適応しなければならない。ユニバーサルのオーディエンス&メディア・チームは、まさに適切なタイミングでアーティストとともに動くことができるチームだと思います」

アレンは、業界の進化について問われると、メジャーレーベルを擁護する姿勢を見せた。

「競争は、私たちの鋭さを保つことに繋がります。もしユニバーサルが変化や進化を受け入れ、方向転換し、より良くあろうとし続ける会社でなければ、私はここまで長くこの会社では働いていなかったでしょう」

「『メジャーレーベル』という言葉は嫌いです。私たちのオフィスには、本当に優秀な20代、30代の若い社員たちばかりが集まっています。彼らはアーティストのため、音楽のために全力を注いでいます。私たちは、時には酷評されます。でも実際に、社員を知り、私たちの取り組みを見れば、印象は変わるはずです。競争は素晴らしいことです。アーティストにとっても、新しいレーベルやプラットフォーム、機会が次々と生まれていることは、間違いなくプラスに左右します」

「エルトン・ジョンのようなアーティストでも、今なおアーティスト・ディベロップメントを続けています。彼のために、新しいオーディエンスを開拓しようと、私たちは最善を尽くしています」

話題は、アーティスト・ディベロップメント(育成)へと移った。アレンは、「デビュー時だけの話ではない」アーティストのキャリア全体にわたる取り組みであることを強調した。

「デビュー時の支援は私たちが得意なところですが、アーティスト・ディベロップメントというのは、何度も立ち返らなければならないものです。エルトン・ジョンでも、今なおアーティスト・ディベロップメントを続けていると言えます。彼のために新しいオーディエンスを開拓しようと、今も努力しています」と同氏は語る。

「個人的に、アーティスト・ディベロップメントとは長期的なパートナーシップです。浮き沈みがあり、ドラマもあれば、成功する時もあれば、そうでない時もある。けれどもアーティスト・ディベロップメントの本質は、『成功とは何を意味するのか』と問い直すことです」

では、成功とは実際に何を意味するのか。アレンは、多様な形があると指摘する。特定のプラットフォームでのオーディエンスの増加。先週よりも多くのTシャツを売ること。去年よりも多くのチケットを売ること。再生回数の伸びかもしれない。

「現在、アーティストの育成を示す指標は実に多岐にわたります。私たちはすべての指標を検討し、どれか一つでも前進できているか。出来ていれば、私たちは前に進み続けるのです」と語った。

アレンの基調講演は、英国で発表された16歳未満のSNS利用禁止の方針への質問に話題が移った。これは、アーティスト、レーベル、音楽マーケティングにどのような影響を及ぼし得るのか。アレンは、UMGの幹部という立場と、一人の親という立場、二つの視点から答えた。

「サラ・ボーマン(Sarah Boorman)というユース戦略担当が私たちのチームにいます。彼女はすでに、若者がSNSを使えなくなった未来がどのようなものになるか、私たちのチームに対して準備を進めてくれました。私たちは時代を少し先取りし、多くの準備を重ね、その中で、機会も多くあると考えています」

「親の立場からすれば、小さなお子さんがいる方にとって、これは素晴らしいことです。正しい取り組みだと思います。問題は子どもたちではありません。問題はコンテンツです。オーストラリアで実際に起きたように、禁止措置が導入されても、子どもたちは抜け道を見つけ出すでしょう」

「私は現状に対して憤りを感じています。問題は子どもたちではなく、プラットフォーム側です。プラットフォームがコンテンツをきちんと管理しないことこそが、問題なのです」

投稿者

  • ジェイ・コウガミ

    ジェイ・コウガミは、Music Ally Japanのエディトリアル・ディレクターで、ニュースレター記事執筆、イベントおよびカンファレンスのモデレーターを担当しています。