Spotifyは、アーティストがフル尺の動画を直接Spotifyにアップロードできる機能の提供を開始した。利用は6月17日からSpotify for Artists経由で始まり、最新のベータ版プログラムに参加するアーティスト数万人は、ミュージックビデオ、ライブパフォーマンス、スタジオセッション、カバー動画などを配信できるようになる。
新機能は段階的に展開が始まっており、アクセスできないアーティストはウェイティングリストへの登録も可能だ。アップされた全ての動画には視聴に応じてロイヤリティ収入が発生し、音楽チャートの対象になる可能性もある。今後アーティストは、動画と楽曲再生の両方から収益を得ることができるようになる。
配信された動画は、リスナー毎にパーソナライズされた動画プレイリスト「Videos For You」や、公式プレイリスト「Today’s Top Videos」「Live Performances」「Video Covers」などに追加される可能性がある。また、アーティストプロフィール内の動画タブ、リリースページ、再生ページ、ファンへの通知にも反映される。
動画配信には、いくつかのルールがある。形式は横型 (16:9)が指定されており、縦型動画には非対応。現時点で、ビジュアライザー、リリック動画、複数曲を含むコンサート映像、音楽が含まれない動画はアップロード不可として、対象から外れている。
動画がアップロードされると、Spotify全体で活用できるショート動画プレビューが自動生成され、アーティストはプロモーション用の切り抜きとして使用できる。
今回の発表に併せて、Spotifyは2023年から提供してきたショート動画投稿機能「クリップス」(Clips)の新規アップロードの受付終了も発表された。30秒のショート動画で、新曲の制作背景やストーリー、舞台裏の映像を届けるための手段として、活用が奨励されてきた。すでに配信済みのクリップスは表示が継続され、今後は動画タブ内へ移行する。
Spotifyにとってミュージックビデオの配信自体は目新しい機能ではない。過去1年に渡り、同社はレーベルやディストリビューターに対して、ミュージックビデオの納品を促してきたからだ。その点、アーティスト自身が直接アップロードできるようになったことは、今回が初めてとなる。なお、Spotifyは今後もレーベルやディストリビューターからの配信が、引き続き音楽コンテンツ (オーディオおよび動画)の主要な配信経路であり続けると強調した。
今回の動きは、Spotifyが音楽配信に留まらない戦略を加速させる中、動画を音楽体験の一部として重要視する方向へと舵を切り、YouTubeやTikTok、Instagramなど競合他社との直接的な競争姿勢をより鮮明にする狙いが示唆される。特に、YouTubeは長年、フル尺のミュージックビデオ視聴の中心として業界内で地位を確立してきた。Spotifyが今回対象に加えた、ライブパフォーマンス映像、リリックビデオ、カバー動画も、YouTubeは長年サポートしてきた実績がある。
Spotifyがアーティストを直接サポートする動きは、2018年に楽曲をアーティストが直接アップロードできる機能を実験的に提供した。レーベルやディストリビューターを経由せず配信できる同機能は画期的な取り組みだったが、1年も経たずに終了した。これはSpotifyの主要パートナーであるレーベルからの強い反対意見が背景にあったと言われている。
今回の動画の直接アップロードは、レーベルにとっての脅威がより少ないと思われる。ただし、動画からのロイヤリティ収入において、レーベルやディストリビューター経由で配信するアーティストと、直接配信するアーティストとの収益化の違いに関する議論が起こる可能性がある。今後、動画アップロードがどこまでSpotify上で増やせるかは、同社の成長戦略の鍵を握っている。
