ライブやツアーは、一見華やかに映るが、アーティストやチームにとっては、現実はまるで違う。実入りの良さそうな出演のオファーでも、実際の収益の不確実性が高く、利益率も薄くなる。

移動費、宿泊費、食費といった経費、スタッフの人件費、演奏するアーティストへの支払い、チケットや会場利用のコミッション、税金など支出は多岐に渡り、赤字で終わるライブも珍しくない。

この「実は儲からない」というライブツアーの構造的な問題において、アーティストがライブの契約を結ぶ前に、収益性を評価し、ビジネス判断を下せるよう支援する新たなプラットフォームが登場した。

先日ローンチされた「GigLogic」は、アーティストやマネジャー、チームがライブのオファーを引き受ける前に、そのライブが本当に利益を生むかどうかを数字で判断できるツールだ。

利用者は、契約を検討中のライブやオファーの詳細を入力し、ツアーの体制に合わせてカスタマイズした経費プロファイルを作成して、想定される収益がその場で可視化でき、隠れたコストを把握したり、収益予測を評価することができる。同プラットフォームは、ライブ業界で多用されるスプレッドシートや、大雑把な概算、憶測や思い込みの推量を置き換えることを目指して設計されている。

料金形態は月額19.99ドルからの有料プランが提供される。

当初の想定利用者はインディーズのアーティスト、マネジャー、小規模なマネジメント会社である。

将来的にはライブ出演の評価を標準化したいブッキング・エージェント、エンタテインメント企業、ディストリビューション・パートナーへの拡大を契約している。

GigLogicを立ち上げた共同創業者のクレイグ・A・マイヤー (Craig A. Meyer)とゲイリー・アーバスノット (Gary Arbuthnot)は、二人とも合わせて数十年におよぶツアーや演奏、ライブ制作、アーティスト・マネジメントなどに携わってきたベテランである。マイヤーは開発の背景には、自らの失敗体験があることを明らかにした「ギャラは利益ではない、ということを身を持って学びました。

書類上は素晴らしく見えた案件を引き受けたものの、実際には収益性が大幅に低かったという経験を何度もしてきました。GigLogicは、アーティストがオファーを引き受ける前に数字を理解し、契約締結において、情報に基づいた判断材料を提供することを目指しています」

アーバスノットは「アーティストは、本人が自覚しているかどうかにかかわらず、実質的には一人の経営者なのです。

忙しくしていることと、事業として利益を上げていることは、全くの別物です。全てのオファーは、ビジネス上の意思決定です。

私たちの目標は、アーティストが案件を客観的に評価し、不確実な情報ではなく、知識に基づいて交渉できるよう、必要な情報を提供することです」と述べた。

GigLogicの登場は、昨今の経済的・社会的コスト増加に伴うツアー運営コストの上昇という、業界全体が直面している構造的な問題の深刻さを示している。

また、キャリアのあらゆる側面を自ら管理せざるを得ないインディペンデント・アーティストやマネジャー、チームが必要としている財務リテラシー、交渉力、ギャラや経費など収益構造の透明性の確保という課題の改善にも貢献することが期待される。

投稿者

  • ジェイ・コウガミ

    ジェイ・コウガミは、Music Ally Japanのエディトリアル・ディレクターで、ニュースレター記事執筆・配信、イベントおよびカンファレンスのモデレーターを担当しています。