今週、韓国で提出された「音楽産業振興法」の改正案をめぐって議論が巻き起こっている。この法案は、音楽ディストリビューターに対し、リリース前にすべての楽曲を事前審査し、未成年者に有害な歌詞やコンテンツが含まれていないかを判定することを義務付けるものだ。

コリア・タイムズによれば、与党「共に民主党」のキム・ヒョン議員をはじめとする10名の議員によって提出された改正案では「楽曲が有害と判定され、かつ制作者が19歳未満の場合、ディストリビューターはその楽曲のリリースを差し止めなければならない。

アーティストが成人の場合、その楽曲が青少年有害指定を受ける可能性があることを事前に本人へ通知する義務がある。

指定されれば成人リスナー限定での配信となる」とされている。現行制度では、青少年有害指定の審査は、リリース*後*に政府委員会が楽曲を審査し、決めている。

性的に露骨な表現、暴力的な内容、ヘイト表現を含む楽曲が指定されると、未成年者へのアクセスが禁止され、配信先も制限される。

新法案を提案した議員たちは、審査前に有害な楽曲が拡散される現制度の抜け道を指摘しており、そうした楽曲の中には、ミュージシャンを志す10代が制作した楽曲も含まれるという。

この法案のきっかけの一つとなったのは、仁川の中学生が同級生に対する暴力的でヘイト表現を含む楽曲を配信し、音楽プラットフォーム上で広く拡散されたことから、社会的な問題に発展した事例が挙げられる。

この法案に対して、韓国の音楽業界からは、政府主導のコンテンツへの検閲の強化に懸念を示す声が上がっている。ヒップホップアーティストのE SENSは、自らのSNSで「検閲を復活させるべきではない。誰が基準を定め、誰が判断するのか。特定の曲を聴いて不快に感じるなら、その人が聴かないことを選べば済む話ではないのか」と投稿した。

同国の文化・芸術11団体による連合も、同様の懸念を表明している。

文化芸術労働連帯は声明で「法案が示す『青少年に明白かつ深刻な害を及ぼすおそれのある音楽』という文言は、具体的な基準を示しておらず、何が有害か恣意的な判断を許すことになる。強力な検閲がヘイトを防げるという考えは謬見である。

もし同法案の根底にある論理が正しければ、韓国現代史において検閲が最も苛烈だったパク・チョンヒ、チョン・ドゥファンの権威主義政権下で、差別とヘイトは消滅していたはずだ」と述べた。

さらに同団体は、この法案は検閲と激しく闘ってきたアーティストたちの抵抗の歴史を侮辱するものだと述べ、与党議員らに撤回を求めている。

投稿者

  • ジェイ・コウガミ

    ジェイ・コウガミは、Music Ally Japanのエディトリアル・ディレクターで、ニュースレター記事執筆・配信、イベントおよびカンファレンスのモデレーターを担当しています。