音楽業界団体が主導するAI生成音楽の識別と、リスナーへの透明性の確保に向けた、業界標準の取り組みが発表された。

主導するのは、米国のレコード業界団体「全米レコード協会」(RIAA)と、世界の業界を代表する「国際レコード産業連盟」(IFPI)の2つの業界団体だ。

の取り組みには、グラミー賞を運営するレコーディングアカデミーや、米国のインディーレーベルが加盟する音楽業界団体「A1IM」(American Association of Independent Music)、「アメリカ映画俳優組合・アメリカテレビ・ラジオ芸術家連盟」(SAG-AFTRA)、ヒューマン・アートリー・キャンペーン、さらには世界各地のインディペンデント・レーベルの国際団体「WIN」(Worldwide Independent Network)と、欧州のインディーレーベルおよびディストリビューターの業界団体「IMPALA」が賛同した。

これまで賛同を示した業界団体は以下の通り。
IFPI
RIAA
A2IM
WIN
IMPALA
The Grammys
SAG-AFTRA
Human Artistry Campaign

今回の取り組みでは、SpotifyやApple Musicなど音楽ストリーミングサービス上の楽曲に2種類のタグが表示されることを想定している。

一つは完全にAIが生成した楽曲を示すタグ「AI-generated」で、その中にはAIが生成したリードボーカルや、主要な楽器演奏、完全にプロンプトから生成された楽曲も対象に含まれる。

もう一つは、人間主体の創作過程やレコーディングで、一部の表現要素のみにAIを使用した「AI補助」(AI-assisted)楽曲を示すタグだ。すでに2つのラベルのデザインも発表された。

このラベリングの仕組みは、技術や要件の変化に合わせて、進化するよう設計されている。

発表時点では、ラベルの仕組みの導入に合意したサービスについては明言されておらず、サービス各社からも発表は無い。

また現時点では、作曲や歌詞のAI活用、ミュージックビデオ、リリックビデオ、カバーアートでのAI使用については、ラベル表示の有無は示されない。

各団体は、業界全体でラベルの実装に向けて、デジタル音楽サービス(DSP)、ディストリビューター、アグリゲーター、標準化団体と連携していく。

公式発表では、業界団体の見解が示された。IFPIのCEOであるヴィッキー・オークリー (Vikki Oakley)とRIAAのミッチ・グレイジャー (Mitch Glazier) CEOは共同声明で次のように述べた。

「ファンは、自分たちが聴いている音楽に生成AIが使われているか、どう使われているかを知りたがっています。世界中の音楽ファンにとって、人間の芸術性と真正性がいかに重要かを考えれば、これらのラベルの存在は、即座に音楽の特性を理解し、透明性を容易に拡張するためのアプローチとなるでしょう」

SpotifyやApple Musicをはじめとする音楽ストリーミングサービスが加盟する業界団体「DiMA」(デジタル・メディア協会)は、今回の動きを注視している。

同団体のグレアム・デイヴィス(Graham Davies)会長兼CEOは声明で次のように述べた「DIMAは長年にわたり、ストリーミングサービス向けにリリース・配信されるすべての楽曲に関して、クリエイター、権利者、配信事業者が正確かつタイムリーなメタデータを提供するよう提唱してきました。私たちは本日の発表を注視しており、より詳細で正確なAI関連メタデータが提供されることを期待しています。こうしたデータは、クリエイターからファンへと至る全工程で円滑に処理されることで最大の価値を発揮するもので、その実現には業界パートナーとの連携が不可欠です」

一方で、DiMAは今回提案された2つのタグを、会員企業である音楽ストリーミング各社が採用するかどうか、または支持していくかは言及しなかった。

AI生成音楽をいかにリスナーやファンに認識させ、人間の創作と区別するかの透明性の確保は、この数年で、音楽業界内で大きなテーマとして議論されている。

アーティストや権利者、ディストリビューター、レーベルに対して、楽曲納品の際に、AI音楽か否かを情報開示するメタデータを付与させるなど、対策も示されてきたが、音楽業界を横断した共通の仕様は確立されていない。

今回の提案を音楽ストリーミング各社がどう受け止めるか、注目が集まる。すでに独自のラベリングの仕組みを立ち上げている、あるいは開発に着手している企業も出始めている。

Spotifyは2025年9月に、AI音楽を識別する戦略を発表し、今年4月にはより詳細は透明性クレジットやアーティストプロフィールの仕組みを導入し始めている。

Spotifyによれば、この仕組みを発表した後、すでに1日あたり数万件のクレジットが提出されているという。一方、Apple Musicは3月に独自の透明性タグの仕組みを発表している。

レーベルとディストリビューターに対してメタデータ単位で、アートワークや楽曲制作、作詞作曲、ミュージックビデオでAIを使用したかの情報開示を求める新たな仕組みだ。

TidalとDeezerは、それぞれ自社開発の技術を活用した完全AI生成音楽の識別・タグ付与を始めており、AI生成か否かで、楽曲の収益化や、アルゴリズムでのレコメンデーションに差を付けている。

投稿者

  • ジェイ・コウガミ

    ジェイ・コウガミは、Music Ally Japanのエディトリアル・ディレクターで、ニュースレター記事執筆・配信、イベントおよびカンファレンスのモデレーターを担当しています。