iTunesストアを活用するアーティストやレーベルが2026年に増えていることを、音楽業界の誰が想像できただろうか? フィナンシャル・タイムズは先日、「iTunesはいかにして復活したのか」という見出しの記事を公開し、iTunes Storeダウンロードがメジャーレーベルやアーティストから再注目されている背景を紹介した。

記事では、近年、メジャーレーベルや著名アーティストによるiTunes限定アルバムのリリースが増えていることに注目した。

昨今の音楽業界では、リリース戦略やアルバムマーケティングは、SpotifyやApple Music、YouTubeといったストリーミングまたはTikTokなどのショート動画サービスが中心で、ダウンロードはそれほど重要視されてこなかった。

同メディアは、アリアナ・グランデやテイラー・スウィフト、チャーリーXCX、サマー・ウォーカー、ドージャ・キャット、ティナーシェといった著名アーティストが、iTunes限定のリリースや別バージョンの販売、ボーナス・トラック、限定コンテンツの配信といった手法を行っていると述べた。

例えば、アリアナ・グランデは最新アルバム『petal』のライブバージョン『petal – the complete live album』をiTunes限定でサプライズリリースし、世界中のファンから多くの反響を集めた。

こうしたリリースを行う大きな要因として、ストリーミングでは体験できないスーパーファンの所有欲を喚起するコレクターズアイテム、そして音楽チャート順位を押し上げる場として、iTunesストアの活用が再び脚光を浴びているという

アリアナ・グランデ、最新作『ペタル』の12曲入りライブALをサプライズ・リリース (Billboard JAPAN)

取材に答えたDefected Recordsの元チーフ・ビジネス・オフィサーのジェームス・カーカム (James Kirkham)によれば、このトレンドの一因には、ストリーミング以前の時代へのノスタルジー回帰があると指摘する。

また、ATCマネジメントでマーケティング事業グローバルディレクターを務めるステファニー・ホートン (Stephanie Haughton)によれば、綿密に計画されたiTunesリリースは、チャートで「1位になるか2位になるかの分かれ目になり得る」と述べている。

今後、iTunesリリースを積極活用するアーティストやレーベルがさらに増える可能性も高い。また、iTunesストアでのリリースは、Apple Musicからのサポートを得る機会につながることも想像できる。

こうしたiTunesリリース戦略は、限定版や別バージョンに即座に反応する、熱心なファンや、既存ファン・コミュニティをアーティストが持っているかどうかにも左右される。

限定配信をチャート実績につなげるには、ファンによる高いエンゲージメントが求められることは、ストリーミングとチャートとの関係とも似ている。

投稿者

  • ジェイ・コウガミ

    ジェイ・コウガミは、Music Ally Japanのエディトリアル・ディレクターで、ニュースレター記事執筆、イベントおよびカンファレンスのモデレーターを担当しています。